一時代の政治を築いた安倍元首相、その足跡をたどる 歴代最長の在任
外交上の足跡
安倍氏は世界のステージでも際立つ存在だった。長年の同盟国である米国との関係強化を進め、トランプ前米大統領とは個人的つながりを築こうとした。16年には当時のオバマ大統領の在任中にトランプ次期大統領に会いにニューヨークを訪れた。
この非公式訪問はトランプ氏が他国の首脳と会う初めて機会となった。安倍氏は日米同盟をたたえ、新大統領との信頼関係を構築したいと語った。トランプ氏が当初掲げた対北朝鮮の強硬路線にも強く賛同したが、それは安倍氏自身のタカ派の傾向にも合致するものだった。
だが、その後米国と北朝鮮との関係は外交面にシフトし、トランプ氏や韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)総書記と歴史的な会談を実施。一方で安倍氏はその脇に置かれているようにみえた。
安倍氏と金氏の会談は設定されなかったが、19年9月には安倍氏が依然会談を行う意欲があると発言した。安倍氏は北朝鮮との関係正常化や朝鮮半島の緊張緩和を模索したが、最重要の課題に掲げたのは1970~80年代に北朝鮮によって拉致された被害者家族に問題の解決をもたらすことだった。
任期中、日韓関係は悪化した。両国は貿易や軍事情報協定の破棄で大きく争う形となった。その一部は第2次大戦のレガシー(遺産)や日本が進めた朝鮮半島の厳しい植民地化が影響している。