中国外相が歴訪の太平洋島嶼国、米沿岸警備隊が既にパトロール
(CNN) 中国の王毅(ワンイー)外相が経済・安全保障協力の促進を目的に太平洋島嶼(とうしょ)国の歴訪を開始したとき、そこには既に米軍で最小規模の軍種が展開していて、米国の長年にわたるこの地域への関与を強化していた。
王毅氏による10日間の歴訪で最初の訪問地となったソロモン諸島の要請に応じ、米沿岸警備隊は予定を変更して巡視船「マートル・ハザード」を同国の排他的経済水域(EEZ)のパトロールに派遣した。ソロモン警察で船の修理が必要になったことを受けた対応だった。
沿岸警備隊の声明では、マートル・ハザードは「ソロモン諸島北部で違法、無報告、無規制の漁業を抑止するための海上監視を行い、必要な作戦上のプレゼンスを埋めるのに貢献した」としている。
マートル・ハザードは「ブルーパシフィック作戦」の一環で既にこの地域に展開していた。沿岸警備隊はこの作戦を「オセアニア地域の安全保障および安全、主権、経済的繁栄を促進し、関係を強化する包括的な多元任務の取り組み」と形容する。
ソロモン諸島は米国がブルーパシフィック作戦で支援する太平洋島嶼国の一つに過ぎず、他にもキリバスやサモア、フィジー、トンガ、パプアニューギニアなどが支援対象に含まれる。いずれも王毅氏の歴訪で訪問地となった場所だ。
CNNが確認した文書によると、中国は多くの太平洋島嶼国に対し、包括的な地域安保・経済協定を提案した。この協定は教育や保健など幅広い分野に関する内容で、5月30日にフィジーで行われた王毅氏と太平洋島嶼10カ国の外相会合での締結が目標とされていた。
だが、会合は提案されていた協定が調印されないまま幕を閉じ、王毅氏は代わりに参加国が5つの「合意点」をまとめたことに言及した。その内容は戦略的協力関係の強化や共通の発展の追求など、おおむね一般的なもので、安保は含まれていなかった。
協定が承認されていれば、インド太平洋地域において戦略地政学上の重要性を持つこの地域と中国の関係は大きく前進するはずだった。
王毅氏は30日にフィジーで行った記者会見で、太平洋島嶼国を「積極支援」する理由を疑問視する声に言及し、中国の意図を擁護した。
「中国と他のすべての発展途上国の共通の発展と繁栄とは、全世界の調和とより大きな正義、より大きな進歩を意味するに過ぎない。過度に心配したり、神経質になったりしないでほしい」(王毅氏)
インド太平洋戦略の一部としての沿岸警備隊
中国が攻勢をかける中、南太平洋地域における米沿岸警備隊の取り組みにはそれほど注目が集まっていない。だが、これは中身のある取り組みであり、2月に発表されたバイデン政権のインド太平洋戦略の一部をなしている。
同戦略の行動計画には「我々は東南アジアおよび南アジア、太平洋の島嶼における米沿岸警備隊のプレゼンスや協力を拡大していく。助言や訓練、配備、能力構築に重点を置く」とある。
沿岸警備隊の資料によると、この地域における米国の影響力の柱の一つとなるのは、クック諸島やフィジー、キリバス、マーシャル諸島、ミクロネシア、パラオ、ナウル、サモア、トンガ、ツバル、バヌアツを含む太平洋11カ国との間で結ばれた「シップライダー(乗船)協定」だ。これらの協定の下、パートナー国の防衛・法執行当局者は米国の巡視船に乗り込み、排他的経済水域で自国の法律を執行する。