中国外相が歴訪の太平洋島嶼国、米沿岸警備隊が既にパトロール
シンガポールのS・ラジャラトナム国際学大学院の研究員、コリン・コー氏によると、米沿岸警備隊が太平洋島嶼国で築いた関係には深いルーツがある。
コー氏は、こうした「防衛・安全保障関係の制度化されたネットワーク」を中国が模倣するのは難しいだろうと指摘。「中国は米国を含む地政学上のライバルが数十年にわたってこの地域で築いた程の協力ネットワークは持っていない」と説明する。
こうした島嶼国では魚が主要な食料源であり、経済の主な原動力にもなっているため、沿岸警備隊はブルーパシフィック作戦の重点を違法かつ無規制の漁業の抑止に置いている。
中国が大きく関係してくるのはこの点だ。
ブルッキングス研究所の2021年の報告書によると、世界最大の漁船団を抱える「中国船籍の漁船は漁獲物を求めて世界中を航行し、発展途上国を始めとする他国の排他的経済水域内で漁業を行うことで有名」とされる。
コー氏は、中国の広範な漁業活動は、この地域の前向きな力になるという中国政府の主張の助けになっていないと指摘。「中国漁船は必ずしも好意的に見られていない。彼らは大規模な遠洋業漁船団であり、地元の漁船をスピードやパワー、漁獲量で上回る装備の優れた大型船を擁しているからだ」と語った。
米沿岸警備隊は「ほぼ完璧」なツール
米海軍の退役大佐で、太平洋軍統合情報センターの作戦責任者を務めたこともあるカール・シュスター氏は、沿岸警備隊は「太平洋島嶼国との関係構築にとってほぼ完璧」との見方を示す。
沿岸警備隊の巡視船といえば脅威を与える船ではなく、何よりも救助活動が連想されるとシュスター氏。「太平洋中部や西部との関係において、沿岸警備隊の重要性を過小評価することはできない」と話す。
一部の専門家からは、中国沿岸警備隊も優れた装備を有しており、この地域で米国と同じ役割を担える可能性があるとの指摘も上がるが、コー氏は少なくとも近い将来にそのようなことが起きるとは考えていない。
コー氏は南シナ海や東シナ海のような自国に近い海域で中国が抱える問題に言及。こうした海域では、中国の沿岸警備隊は漁業権や領有権をめぐる争いへの対応に忙殺されている。
こうした問題を見ても公正な仲介者としての中国の信頼性に疑問符が付き、米沿岸警備隊に有利な状況になっているという。
「中国が現在の米国と同様の取り組みを進めるだけの政治資本を持っているとは考えにくい」(コー氏)