パキスタン洪水、気候危機がもたらした災害と専門家 低調な支援に批判も
ロンドン(CNN) パキスタンを壊滅的な状況に追い込んだ洪水を分析したところ、人間の活動に起因する気候危機の「形跡」がみられる災害であることが分かった。今回の洪水では1400人以上が死亡。土地やインフラが大規模に破壊された。
分析は国際組織、ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)が15日に公開した。それによると気候変動が洪水にどれだけ影響を及ぼしたかについての具体的な数値化はできなかったものの、一部のモデルから気候危機が雨の強さを最大50%高めた可能性があることが分かった。シンド、バルチスタン両州の5日間の豪雨に特定して調べた結果だという。洪水は数カ月にわたる豪雨が現地で続いたために起きていた。
分析はまた、今回の洪水が100年に1度起きる水準の災害である公算が大きいと指摘。つまり毎年1%は、同様の洪水が発生する恐れがあるとした。
仮に世界の気温が、このまま行けばそうなるように産業革命前の水準を2度上回るとすると、上記の5日間に降ったような豪雨はさらに勢いを増すとみられる。地球の気温はすでに、産業革命前と比較して約1.2度高い状態にある。
洪水の規模とWWAの分析から浮き彫りになるのは、巨額の財源を投入して気候危機の影響に対処する必要があるということだ。
しかしケンブリッジ大学の地理学者、アイシャ・シディキ氏は記者会見で、「現状寄せられる支援の規模はわずかなものだ」と指摘。「多くの西側諸国は、自国も危機にさらされていると主張する。原因に挙げるのはウクライナでの戦争をはじめとする様々な問題だ」と述べた。
その上で、英国の当初の支援額150万ポンド(約2億4600万円)については「話にならない」と一笑に付した。
ただ英国は最近になって、公約する支援の規模を1500万ポンドに拡大している。現在のパキスタンに当たる地域はかつて英国が植民地としていたインドの一部で、1947年にそれぞれの主権へと分割された。
シディキ氏によれば、現状でパキスタンに送られる支援の額は、2010年に起きた同国の洪水の時と比較すると少ない水準にとどまる。