香港、英エリザベス女王追悼に別の目的 中国への反抗
別の弔問者のシルビア・リーさんは、女王の訃報(ふほう)を聞いて悲しかったと思いを吐露。女王は世界中で安定の象徴だったとの見方を示した。
「誰も永遠に生きることはできず、いつかこのような日が来るのは分かっていた。女王は尊敬される人物で、植民地時代の政府は香港の開発に多大な貢献をした。70~80年代は特にそうだ」とリーさん。当該の時期には、英国政府に任命された香港総督が公営住宅を建て、交通インフラを整備した。
表向きには、女王の追悼が対立を生むようには見えないかもしれない。中国の習近平(シーチンピン)国家主席も香港行政長官の李家超(ジョン・リー)氏も、英国に向けて自分たちの弔意を送っている。
しかし市民による愛着の表明は、香港における民主化要求の抗議デモを思い起こさせるものでもある。当時デモ参加者たちは植民地時代の旗を中国の一党独裁体制に対する抵抗の象徴としていたからだ。
2019年の抗議デモでは香港政府に反発する参加者が議事堂に侵入し、普通選挙の実施を求める主旨の落書きを行った。その時議長席には、植民地時代の香港の旗が掲げられていた。
香港の植民地時代に絡む微妙な問題が存在するのが浮き彫りになったのは15日、広東語で演じられる伝統演劇「粤劇(えつげき)」のスター、羅家英氏が総領事館の外で献花したことを謝罪した時だ。同氏は自身のインスタグラムへの投稿も削除。そこには女王を追悼したい理由として、女王統治下の香港が「天国」だったからとする内容が書き込まれていた。
羅氏はこの文言について「考えが足りなかった」とし、人々に「深読みしすぎ」ないよう要求。SNSのウェイボー(微博)で「私は中国人であり、今後も常に母国を愛する。申し訳ない」とつづった。
羅氏がどのようなきっかけで謝罪を表明したのかは不明。