香港、英エリザベス女王追悼に別の目的 中国への反抗
香港(CNN) 数千人の香港市民が集まり、亡くなった英国のエリザベス女王に哀悼の意をささげている。中国が政治的な反対意見の締め付けに動いて以降、最大規模となる集会だ。かつて英国の植民地だった香港では、中国政府による民主派への取り締まりが2年余り前から強化された。
年齢も様々な2500人以上の群衆が今月12日、英国総領事館の外に数時間にわたって列をなした。気温33度の暑さに耐えつつ、花や額に入れた写真、「事頭婆」への感謝の言葉を記したメッセージを供える。「事頭婆」とは女王を指す広東語の呼称で、植民地時代によく知られていた。「ボスの女性」、「おかみさん」といった意味合いになる。
一部の参列者にとって、こうした行動は香港を45年統治してきた一君主への追悼にとどまらず、中国の支配強化に対する巧妙な抗議でもあった。かつての香港は自由闊達(かったつ)な議論が叫ばれる都市だったが、英国から中国に主権が移った25年前から市民の自由が着実に損なわれたとする批判の声が出ている。
公共の場に集まる機会がめっきり減ったのは、中国が「香港国家安全維持法(国安法)」を施行した2020年6月以降だ。そこには一段と強力になる民主化要求の抗議行動を撲滅する狙いがあった。香港は19年からこうした抗議行動で揺れていた。国安法に新型コロナウイルス感染抑止の規制が重なり、公然たる形での大規模集会や抗議行動はすっかり鳴りを潜めた。コロナの規制については、政治的な目的に利用されることもあったと主張する人々もいる。
こうした中、英国の君主制とその象徴を称賛することは、一部の香港人にとって中国共産党と香港当局の両方を暗に攻撃する好機に映る。前者は、香港人らが植民地時代を忘れるのを熱望すると公言してはばからない。一方後者が最近導入した学校教科書には、そもそも香港が植民地だったことはなく、英国による統治の時代は「強制的な占領」だったと記されている。
退職者の男性が1人、総領事館の外でCNNの取材に答えた。氏名を明かすのを控えたこの男性、ウィンさんは、大勢が集まる場に再び参加できるのは「素晴らしい」と語った。
その上で「香港政府には憤りを覚える。(女王に対して)きちんと敬意を払おうという姿勢が全くない。中国政府に叱(しか)られるのを恐れているのだろうが、我々は元々植民地の一部だった」と述べた。ウィンさんは1960年代の生まれだ。