中国初のサル痘の症例、「外国人に触れるな」の勧告が物議
(CNN) 中国本土で初のサル痘の症例が確認されたことを受け、中国疾病予防コントロールセンター(CCDC)の専門家が「外国人と接触してはいけない」と呼びかけた。SNSではこの勧告に対する反発や憤りの声が噴出している。
CCDCの疫学首席専門家、呉尊友氏は17日、「微博(ウェイボー)」への投稿で、新型コロナウイルス対策規制と厳格な国境管理のおかげでこれまでのところはサル痘の感染拡大を阻止できていたが、1例が「網をくぐり抜けた」と書き込んだ。
地元当局者によると、サル痘の症例は南西部の重慶市で、新型コロナ対策として海外からの入国者に義務付けている隔離措置を通じて見つかった。感染者が外国人なのか中国人なのかは明らかにしていない。
サル痘の症例は今年5月から世界各国で確認されるようになり、米疾病対策センター(CDC)によると、米国では今年に入ってこれまでに2万3500例が報告されている。
呉氏は「監視と防止を強化することが必要であり、重要だ」と述べ、海外渡航や濃厚接触を通じた感染拡大のリスクを強調。対策として第一に、「外国人とは皮膚と皮膚との接触を行ってはいけない」と勧告した。
この勧告はウェイボーで論議を呼んだ。勧告は理にかなっていると評価する声や、「国の門戸を開くのは結構だが、誰でも入国させるわけにはいかない」と書き込んだユーザーもいた。
一方、差別的で有害な勧告だとして非難する声もあった。
「パンデミックが始まった時のようだ。海外では不安に駆られて中国人を避ける人たちもいた」「両方とも科学的根拠はないと信じる。あまりに広範過ぎて、国民のパニックをあおる」とあるユーザーは投稿。中国在住の外国人労働者や長期居住者の多くはこのところ出国しておらず、中国人よりも感染している確率が高いわけではないという指摘もあった。
「パンデミックが始まった当初、立ち上がって私たち自身のプラットフォームを使い、『中国人はウイルスではない』と言ってくれた外国人の友人もいた」「その後、国内の感染拡大が封じ込められ、外国人の友人が差別にさらされ始めても、多くの中国人は完全に沈黙を保った」と別のユーザーは書き込んでいる。
呉氏の投稿をめぐる論議は、中国本土で多くの人に共通する「コロナ疲れ」を浮き彫りにした。ほぼ3年に及ぶ厳格な対策のために日常生活は支障をきたし、経済は混乱状態に陥っている。
中国の専門家は、サル痘がそうした混乱を生じさせることはないとの見方を示し、国営英字紙グローバル・タイムズは16日、病院経営者の話として、サル痘にほとんど脅威はないと伝えた。
しかしその一方で引き続き警戒を促し、「厳格な監視」や対策の必要性を指摘する専門家もいると同紙は伝えている。
呉氏は17日のウェイボーの投稿で、見知らぬ相手や海外から到着したばかりの人とは濃厚接触しないこと、衛生状態を保つこと、使い捨てのトイレットペーパーを使用するか、使用前に消毒シートでトイレの便座を消毒することを呼びかけた。
しかしこうした勧告に対し、自分たちが多くの犠牲を払ってきたことを指摘して、苛立ちや怒りをあらわにするユーザーも相次いだ。
「事故に備えて自動車保険には加入するけれど、運転は拒まない」「新型コロナ感染を防ぐためにマスクは着けるけれど、外出は拒まない」というコメントや、「新型コロナに対する対応があんなだったのに、まだ彼を信頼できるのか?」というコメントも寄せられている。