大統領選間近のブラジル、かつてなく高まる緊張と暴力 世論調査機関に脅迫も
(CNN) 大統領選の投票日を来月2日に控えた南米ブラジルで、選挙に絡んだ嫌がらせや襲撃が多発している。中立の世論調査機関もこうした行為の標的になるなど、緊張と暴力が蔓延(まんえん)する風潮は前例のない水準に達している。
再選を目指す極右のボルソナーロ大統領は現在、主要な世論調査で左翼のルラ元大統領にリードを許している。主義主張が大きく異なる両者の対決は国内を二分。専門家からは、政治に対する怒りが今年は別の次元に突入したとの分析も出ている。
国内での世論調査を手掛けるクエスト・リサーチ・インスティテュートのフェリペ・ヌネス最高経営責任者(CEO)は、今年目の当たりにしている二極化は単なる二極化ではなく、「感情的二極化」だと指摘。「そこでは異なる政治グループが互いを敵とみなす。競い合うライバル同士とは考えない」と述べた。
その上で、自社の調査員の中には今年、調査を実施中に嫌がらせを受けた人もいると付け加えた。
別の著名な世論調査機関ダッタフォーリャは、調査員の一人が命にかかわる脅迫を受けたと明かした。当該の調査員がサンパウロ郊外の街でボルソナーロ氏の支持者を自称する男性から話を聞くのを拒んだところ、男性は不満を露(あら)わにし、偏見にとらわれていると調査員を非難。「ルラ氏の支持者」と「住所不定者」からしか話を聞かないとして、調査員を殴り、刃物を突き付けて脅したという。
ダッタフォーリャはこの件を警察へ通報した。同機関で選挙関連の調査を担当する責任者はCNNの取材に答え、調査の指針の一つとして自分から話をしようと申し出る相手にはインタビューできないことになっていると説明。統計上の目的から、取材対象を無作為に選ぶ必要があるためだとした。
ダッタフォーリャによると今月7日以降、従業員に対する嫌がらせや暴力は上記のほかにも42件報告されているという。
こうした暴力はどちらの政治勢力でも発生しているが、批評家からはボルソナーロ氏を糾弾する声が上がる。同氏が意図的に支持者をたきつけ、国内の選挙制度に対する不信感や不満を煽(あお)っているというのがその理由だ。
ボルソナーロ氏は再三ダッタフォーリャを名指しし、調査の正確性に疑問を投げかけている。今月7日にもブラジルの独立記念日での演説で、ダッタフォーリャが信用できない機関だと示唆する発言をしていた。