ANALYSIS

トラス英首相、政策転換も苦境は変わらず

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ロンドンのヒースロー空港に到着したクワルテング財務相=14日/Andrew Matthews/PA Images/Getty Images

ロンドンのヒースロー空港に到着したクワルテング財務相=14日/Andrew Matthews/PA Images/Getty Images

だが、野党労働党から攻撃もされやすい。懐疑的な人々は、ハント氏のこれまでの実績が一長一短だと指摘する。そうした批判の真偽はさておき、ハント氏の保健相時代、英国の医療制度が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)に十分な備えができていなかったと野党上層部から言われる可能性もある。

何かと問題の多かったボリス・ジョンソン前首相が退陣した後、ハント氏もこの夏の党首選に立候補したが、その際はトラス首相よりも大胆な法人税減額を約束していた。

明白な欠点にもかかわらずトラス首相がハント氏を選出したのはなぜか。おそらく政府は夏の党首選の対立候補を振り返り、左派から出馬したハント氏の得票数がもっとも少なかったことに目を留めたのだろうと、ある与党議員はCNNに語った。党首選でトラス氏としのぎを削った他の対立候補を昇進させるよりも、ずっと脅威が少ないというわけだ。

ハント氏は今月31日に国民に向けて演説を行い、財政政策を発表する予定だ。政府は燃料費支援策として借り入れを行いつつ、どのように帳尻を合わせていくのか。今後2年間の具体的な計画が発表される。

トラス首相いわく、減税政策の撤回で180億ポンド(約3兆円)がもたらされるという。だがクワルテング氏の予算案が人々の記憶から消えるほどの蓄えになるかというと、ありえそうにもない。

与党議員が最も懸念しているのは、トラス首相の信頼が失墜し、箔(はく)が落ちることだ。この先失敗したとしても、この度任命した財務相に責任を転嫁することはできない。世論調査で急激に支持を伸ばし、活気づく労働党を前に、トラス首相はかなり頼りなさそうだ。

今後の展望はどうなるのか。憲法上は25年1月まで次期総選挙を開く必要はないが、そこまでトラス政権がもつだろうという声は聞かれない。だが、たとえ状況が悪化し続けたとしても、わずか6年間で4度の党首交代は難しいだろう。

党規では、トラス氏は就任1年目は党首として安泰だ。党規が修正される可能性もあるが、たとえそうなったとしても、後任が世論の流れを変えられるかはわからない。

ある保守党議員は、一番いいのはトラス首相が退陣することで、党首が変われば、次の選挙で野党の地滑り勝利を防げる程度には状況改善を図れるだろうと述べた。

ジョンソン前首相の退陣からわずか数カ月後に、また同じような形で国民に相談なく党首を入れ替えれば、党に対する世間の見方はますます悪化しかねないと懸念する声もある。

いずれにしても、当面、トラス首相と保守派は身動きが取れない状態だ。大幅な改革を打ち出すこともできず、カギとなる盟友を欠き、党を束ねることもままならないトラス政権は、ただひたすら後任への引き継ぎを待つ暫定政府の様相を呈しかねない危機にある。

本稿はCNNのルーク・マクギー記者の分析記事です。

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