自らの「ゼロコロナ」政策にとらわれた中国、国民の混乱や窮状に拍車
香港(CNN) 中国の習近平(シーチンピン)政権が異例の3期目に入って1週間あまり。厳格な「ゼロコロナ」政策への固執が中国全土で混乱や窮状に拍車をかけている。
北西部の西寧市では先週、新たなロックダウン(都市封鎖)に苦しむ住民が必死の思いで食料を要求した。西部のチベット自治区では中心都市ラサの街頭で、70日以上続く外出禁止令に対する抗議運動が行われた。
中国最大のiPhone(アイフォーン)製造工場がある中部の河南省でも新型コロナの集団感染が発生し、封鎖された富士康科技集団(フォックスコン)の工場から出稼ぎ労働者が集団で脱出した。
東部の金融都市・上海にあるディズニーランドは10月31日、コロナ感染防止措置に従って突然ゲートが封鎖され、園内にいた入場者は閉じ込められた状態で検査を受けさせられた。
世界がコロナ禍から離れ始める中でも、中国は依然として多くの地域でロックダウンや強制隔離、絶え間ない集団検査、移動制限などが続き、経済活動や日常生活をまひさせている。
中国共産党の指導部刷新を前に、一部にはコロナ規制の緩和を期待する声もあった。しかし習国家主席のゼロコロナ政策が支持されたことで、中国当局は一層規制を強めている。
米シンクタンク、外交問題評議会のヤンゾン・ファン氏は、「第20回党大会は、ゼロコロナから脱却するためのスケジュールを示さなかった。代わりに現在のアプローチに固執することの重要性を強調した」と指摘する。
繰り返されるロックダウンや隔離、集団検査は経済や社会に大きな打撃を与え、国民は我慢の限界に達して不満を募らせている。
10月31日、河北省保定市で、刃物を振りかざした男性が車でコロナ検問所を突破した。息子のために粉ミルクを買おうとした父親の必死の行動だった。この現場をとらえた映像が出回り、その後男性が逮捕されたことでネット上では憤りの声が噴出。地元警察は怒りを鎮めようと翌日、男性は100元(約2000円)の罰金だけで済み、子どもの「粉ミルク問題」は「適切に解決された」と発表した。
11月1日には甘粛省蘭州市で3歳児が死亡したことをめぐり、新たな憤りの声が巻き起こった。家族はロックダウン措置のために救急対応が遅れたと主張。警察はその後、当局が到着した時には子どもの呼吸が停止していたと説明したが、救急車の到着が遅れたという家族の訴えには対応しなかった。
2日には、中国がゼロコロナ政策から脱却するための準備委員会を組織しているという未確認のうわさがSNSで流れたことを受け、中国株が急騰した。
しかし外務省は、そうした計画については認識していないと述べ、うわさはかき消された。
専門家によると、中国政府がこのアプローチの見直しに向けた措置を講じる兆候は見えない。
ゼロコロナ脱却を阻むもう一つの障壁は、中国政府が厳格なコロナ対策を正当化する目的で国民に植え付けたウイルスに対する恐怖心が根強いことだと専門家は指摘する。
「当局はコロナの重大性や死亡率を誇張し、長期的な症状を吹聴している。普通の人たちの多くは今もこのウイルスを非常に恐れ、コロナから回復した患者はひどい差別や偏見に苦しんでいる」。香港大学のジン・ドンヤン氏はそう解説した。
同氏によると、フォックスコンの工場から数千人の出稼ぎ労働者がパニックに陥って集団で脱出したのも、そうした恐怖が一因だった。
鄭州市(人口1200万人)は先月、新型コロナの症例が数十例確認されたことを受け、大規模なロックダウンに入った。