イタリアの地元紙ラ・ナツィオーネの報道によれば、今年こうした警察署のひとつに対して地元の調査が行われたが、違法行為は一切発見されなかったという。地元紙イル・フォッリョは警察幹部の最近の発言として、こうした警察署は単なる行政機関のように見え、とくに気がかりな点はなかったと報じている。
CNNはイタリアの外務省と内務省にコメントを求めたが、返答はなかった。
中国は18~19年に、同様の合同パトロール協定をクロアチア、セルビア両国と結んでいる。習氏の肝いり外交政策「一帯一路」構想のコースに沿って、戦略的拠点を増やす取り組みの一環となっている。
ごく最近では今年7月、クロアチアの首都ザグレブの街中で、中国人警察官が現地警察と合同パトロールを行う姿が見られたと中国メディアが報じた。
中国メディアの新華社通信からインタビューを受けたザグレブ警察関係者は、「外国人観光客を保護し引きつける」ために合同パトロールは必要不可欠だと語った。
19年のロイター通信の報道によれば、中国人警察官は殺到する中国人観光客への対応支援として、首都ベオグラードでセルビアの警察官と合同パトロールを実施した。あるセルビアの警官は、中国側には逮捕する権限は与えられていないと語った。
セーフガード・ディフェンダーズによれば、中国は南アフリカにも足がかりを得てきた。さらに、近隣諸国とも南アフリカと同様の協定を結んで足を伸ばしている。
中国は20年ほど前から南アフリカの警察当局との取り締まり連携強化で基盤を固めてきた。両国間で継続している安全保障協定に基づき、南アフリカ政府の協力のもと「海外中国サービスセンター」の正式名称を持つネットワークを設立した。
在ケープタウン中国領事館は、この計画で「南アフリカ人も、南アフリカ在住の外国人も、あらゆるコミュニティーがひとつになれる」と述べた。
さらに、設立以降、ネットワークは「コミュニティーに対する犯罪防止に積極的に取り組み、犯罪件数を大幅に減少させている」とも言及。センターは「取り締まり権限」を持たないNPO団体だと説明した。
米ワシントンのシンクタンク、ジェームズタウン財団が19年にまとめた中国情勢に関する報告書によると、中国メディアはセンターへの支援を表明する南アフリカ政府関係者の発言を頻繁に報道してきた。そうした関係者は、センターの活動のおかげで警察と現地で暮らす中国人の関係が深まっていると語っているという。
CNNは南アフリカ警察に連絡を取ったが、コメントを得られていない。
本人の意思に反して帰国を強制する中国
セーフガード・ディフェンダーズが警察ネットワークの存在に気づいたのは、中国が自国民の一部に本人の意思に反して帰国を促している取り組みの規模を調査していた時だった。中国の公式データに基づけば、そうした人々の数は習政権の間に全世界でおよそ25万人にのぼる。
「中国からの動きとしては、世界のあらゆる場所で反対分子への弾圧、人々への恐喝、嫌がらせをする試みがますます進むだろう。十分怖がらせて黙らせるか、自らの意思に反して中国に強制送還させるための取り組みだ」と、セーフガード・ディフェンダーズのキャンペーン・ディレクターを務めるローレン・ハース氏は言う。
「最初は電話から始まる。中国本土にいる親族への恐喝だったり、あるいは本人への脅しだったり、あらゆる手を使って海外の標的をなだめすかし、帰国させようとする。それが上手くいかなければ外国で秘密工作員を使う。北京から工作員を派遣して、誘惑やおとりといった手段に出るだろう」(ハース氏)
フランス内務省は、中国人がパリ郊外にある中国の警察署により帰国を強制されたとの主張に対するコメントを控えた。
報告書で火が付いた怒りと調査
報告書による暴露を契機に、一部の国々では怒りの声が高まる一方、あからさまに口を閉ざしている国もある。
米連邦捜査局(FBI)のクリストファー・レイ長官は先月、上院の国土安全保障委員会で、報告書の内容に深い懸念を示した。「中国警察が、適切な調整もなくニューヨークで店を開こうとしているなど、言語道断な考えだ。主権の侵害であり、標準的な司法上、法執行上の協力プロセスを回避している」
アイルランドは国内で確認された中国警察署を閉鎖した。オランダも同様の措置を講じ、現在調査を進めている。スペインもオランダと同様の対応している。
セーフガード・ディフェンダーズのハース氏はCNNに、今後もさらに多くの警察署を見つけることになるだろうと語った。「これは氷山の一角に過ぎない」
「中国は自分たちの行いを隠そうとしていない。こうした活動を拡大していくと明言していて、事態を重く受け止める必要がある」
「今は各国が熟考を迫られるタイミングとなっている。これは自国における法の支配と人権の問題であり、それは中国から来た人々のためであり、また世界中の他の全員のためであるという点の考慮だ」