南アの外交トップは、合同海上演習に対する批判を「ダブルスタンダード」だと述べた。
ロシアによるウクライナ侵攻とウクライナ領土の併合を非難する国連決議の採決が行われた際、南アは他の複数のアフリカ諸国と並んで棄権した。
「我々に与えられた回答方法は、条件をのむか否かの二択だ。そのように横柄な態度を突きつけられては棄権するしかないと判断した」。南アのナレディ・パンドール国際関係協力相は6月、このようにCNNに語った。
国際社会は国連の権限のもと、ロシアとウクライナの間の交渉による和解を目指すべきだというのがパンドール氏の主張だ。南アのシリル・ラマポーザ大統領も、こうした交渉の仲介役を申し出ている。
ロシア、ウクライナいずれも、同大統領の申し出を受け入れていない。だがこうした南アの戦争に対する立ち位置は、同国を国際社会から締め出すには至っていない。戦争の勃発以来、米国からはアントニー・ブリンケン米国務長官やジャネット・イエレン米財務長官、上級外交官がこぞって南アを訪問している。
おそらく米国の上級外交官は歴史を念頭に置いて、南アを名指しで批判しないよう配慮しているのだろう。
だが、たとえ南ア政府当局者がこうしたスタンスを現実的だと考えていても、倫理的というには無理がある。マンデラ氏やケープタウン大主教を務めた故デズモンド・ツツ氏といった偉人を生んだ国なのだから、当然だ。大主教の財団は「どっちつかずの態度を取っている」時ではないと発言している。
噂(うわさ)通り、ロシアが軍事演習でアドミラル・ゴルシコフから極超音速ミサイルのツィルコンを発射すれば、南ア政府はさらに批判にさらされるだろう。
この長距離ミサイルは音速の5倍以上のスピードで飛行し、他のミサイルと比べて探知や迎撃が難しい。
プーチン氏も以前このミサイルを褒めそやし、ロシア国営タス通信によれば「世界のどの国にも、これに匹敵するものはない」と発言していた。さらに「これほど強力な兵器があれば、ロシアは想定される外的脅威から確実に守られ、我が国の国益は確保されるだろう」と続けた。
合同軍事演習でミサイルを誇示すれば、ロシアの指導者にとってはさらなるプロパガンダの材料となるだろう。これまでのところ、ロシア製の兵器はウクライナの戦争で期待通りの成果を挙げられていない。
南アは「中立」の立場を固持することで、戦争の節目でプーチン氏に大きな勝利を与えている可能性がある。
「ロシアはこうした展開を引き出そうとするだろう。これをプロパガンダの材料にして、『我々には味方がいる、協力者がいる』というメッセージを発信するつもりだ」とグルズ氏は述べた。
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本稿はCNNのデービッド・マッケンジー記者の分析記事です。