ヒトラーの演説とナチスのスローガン、鉄道車内のスピーカーから流れる オーストリア
(CNN) オーストリア国内を走行中の鉄道の車内スピーカーからヒトラーの演説の録音が流れ、乗客に衝撃が走る出来事がこのほどあった。
乗り合わせた複数の乗客によると、演説の他「ハイル・ヒトラー」や「ジーク・ハイル」といったナチスのスローガンも聞こえてきたという。
当該の列車はブレゲンツとウィーンの間を走行していた。ウィーンで活動するユダヤ教指導者(ラビ)のシュロモ・ホフマイスター氏は、自身の乗車中に起きたこの出来事についてツイッターで投稿。演説やスローガンを聞いて笑い出す乗客もいたが、自分は極めて不快だったと述べた。その上で、列車を運行する側は説明などを一切せず、すべて無視していたと批判をにじませた。
ホフマイスター氏が15日、CNNの取材に答えたところによると、ウィーンに到着する約25分前、ザンクトぺルテン市内を走行中にスピーカーから奇妙な音楽と途切れ途切れの会話が流れ始めた。それが突然ヒトラーの演説に切り替わり、音量がどんどん大きくなったという。
最初は何かの間違いか悪い冗談かと考えたが、やがて急に不安を覚えた。拡声装置だけが勝手に操作されているのか、それとも列車全体が乗っ取られているのか判然としなかったためだ。乗客の中には混乱している人もいれば、きまり悪そうに笑っている人もいたと、ホフマイスター氏は振り返った。
当該の列車を運行していたオーストリア連邦鉄道の広報担当者は15日、CNNに対して、「何者かが複製した鍵で不正に内部通話装置を開き、ヒトラーの演説をスピーカーから流した」と説明。事案は既にオーストリア警察に通報され、捜査が行われているとした。
広報担当者によると、音声を流すことに関与したとみられる人物2人が列車内の監視カメラで特定されている。内部通話装置のいかなる悪用も処罰されるべきなのは極めて明白であり、とりわけ法律に反してナチスを象徴する内容を使用するのは全く受け入れられないと、同担当者は強調した。
列車に乗り合わせた政治家やジャーナリストらもこの件についてソーシャルメディアで投稿し、問題の音声が流れた経緯について疑問を投げかけた。
このうちジャーナリストのコレット・シュミット氏はCNNの取材に答え、ヒトラーの演説は20秒ほどの長さだったと説明。続いてナチスのスローガンが流れ、その後はそれらが繰り返されたとした。
この間、車掌か誰かが来ることもなかった。「誰が今、この列車を運転しているのか?」という疑問が浮かび、とても恐ろしかったという。