ANALYSIS

ロシア人武装集団が語る自国への越境攻撃、ウクライナ側の公式見解と食い違いも

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鹵獲したロシア軍の走行車両に集まった、ウクライナ側で戦うロシア人の兵士ら/Sergey Bobok/AFP/Getty Images

鹵獲したロシア軍の走行車両に集まった、ウクライナ側で戦うロシア人の兵士ら/Sergey Bobok/AFP/Getty Images

ウクライナ・スーミ州(CNN) ロシアの反体制派武装集団が自国での攻撃から戻り、ウクライナに姿を現した。いかにも上機嫌な様子で、鹵獲(ろかく)したロシア軍の装甲車両を臆面もなく披露したが、ウクライナ政府の公式見解の順守には苦労している様子だった。

ウクライナの当局者はこれらの兵士について、独自に行動していたと説明する。兵士らは今週、ロシアとの国境を越え、ベルゴロド州の複数の町に攻撃を加えた。2日間の急襲の様子は、ソーシャルメディアで大々的に記録された。

実際のところ、彼らは独自に行動していたわけではなかった。

ウクライナ国内で自国と戦うロシア人からなる2つの組織「自由ロシア軍団」と「ロシア義勇軍団」のメンバーは、全員がウクライナの治安部隊の指揮下にある。

記者は24日、極右組織のロシア義勇軍団を率いるデニス・ニキティン氏に対し「これはウクライナ国防省とは連携しない独立した行動だったのか。それとも彼らからの指示があったのか?」と尋ねた。

ニキティン氏は「言うまでもなく、我々のあらゆる行動、国境の向こう(ロシア側)で下すあらゆる決定は、我々独自の決定だ」と答えた。

だが続けて、一定程度の「励ましや手助け、支援」があることを認めた。

ニキティン氏によれば、兵士らがウクライナ人の「同志、仲間」に対して作戦計画の支援を求めることは可能だ。こちらが策定した計画についてどう思うか、妥当な任務と言えるかどうか、ウクライナにとって助けとなるか、それとも事態を悪化させるのかといったことを確認できるという。

ウクライナ人はこうした計画の是非について、率直な答えを口にする。それはある種の励ましであり、助けにもなるとニキティン氏は語る。

同様の事例は「シーザー」とあだ名される自由ロシア軍団の広報担当者からも明かされた。自由ロシア軍団は比較的穏健な反プーチン派の組織で、メンバーは数百人。ウクライナでの戦争の終結と、ロシアのプーチン政権の打倒に向け尽力している。

ロシアの反体制派が米国製の耐地雷伏撃防護車両(MRAP)を使用したというのは事実かと尋ねると、「ハンビー(高機動多用途装輪車両)も使った」と、シーザーは答えた。各国の兵器を扱う施設で購入したとして「金さえあれば誰でもできることだ」と付け加えた。おそらくMRAPは、米国がウクライナに供与したのと同種のものだろう。

シーザーは皮肉を込めて、意識的にロシアのプロパガンダの文言を繰り返した。それはロシアが最初にウクライナに侵攻した2014年に使用されていたものだ。当時ロシア政府は自国の軍隊が現地にいることを否定。親ロシア派の反体制派がロシア製の車両を一般市場で購入していると示唆していた。

米国製車両が攻撃に使われたという事実は、米国政府にちょっとした驚きをもたらしている。

米国防総省のライダー報道官は23日、「米国はいかなる第三者への装備の引き渡しも承認したことはない。ウクライナ軍に属さない準軍事組織への引き渡しは認めておらず、ウクライナ政府からもそうした引き渡しの要請は受けていない」と説明。米国はこの問題を「注視し続ける」と強調した。

西側諸国はかねて、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)の加盟国から供与された兵器をロシア国内で使用することはないと主張してきた。例えば英国が供与した長距離巡航ミサイル「ストームシャドー」をロシア国内の標的に使用した場合、NATOがロシアと直接衝突している様相を呈するリスクが生じる。

ただMRAPはあくまでも装甲車両。本当に問題になるのは兵器システムだ。

ウクライナとしては、ロシア国内を襲撃したとは絶対に思われたくない。そこで今回はロシア人を使い、彼らはウクライナの命令に従ってはいなかったと主張した。

そうは言っても、ウクライナ政府は結果に満足するはずだ。反体制派による急襲は、ロシアに揺さぶりをかけるという望んだ通りの効果をもたらした。

ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏は23日、親ロシア派のブロガーのインタビューに答え、ベルゴロド州への急襲によりロシア軍の愚劣さが証明されたと指摘。「彼らがモスクワに侵入しないという保証がどこにある?」と、語気を荒げて非難した。

その上でロシア連邦のエリートらへの批判を展開。彼らは自分の子どもを戦地に送ることがないため、一般国民との間に分断が生まれているとの見解を示唆した。

「こうしたあらゆる分断の果てに起こりかねないのが革命だ。まさしく1917年がそうだったように」(プリゴジン氏)

モスクワのノーメンクラトゥーラ(支配階級)の子息が、すぐさま大挙して動員に応じることはないだろう。

それでも敵の兵士の混乱は、戦争を勝利へと導く。これはロシア軍のゲラシモフ参謀総長の名を冠したドクトリンの教えだ。

前出のシーザーにも、ロシア軍はガタガタだという確信がある。

「彼ら(ベルゴロド州のロシア軍守備隊)はあまりに愚かで、動きも遅すぎた。(応戦するのに)約5時間かかった。状況の把握に努めるだけだ。反撃してきたのは機械化部隊1隊くらいのものだった。昨日、我々はその機械化部隊を撃滅した。敵には多くの死傷者が出ている」。ロシアの学校で習ったという英語で、シーザーはそう説明した。

それから「これはただの始まりに過ぎない。偵察のための作戦でしかない」と、付け加えた。

本稿はCNNのサム・カイリー記者の分析記事です。

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