ワグネルの部隊と核弾頭はどこに? ベラルーシ移動の兆候を探る西側情報機関
ロシアによる核の指揮統制
米当局者の間では、ロシアがベラルーシに兵器を配備した場合、どうやって不正勢力から守るつもりなのかという疑念がくすぶる。ただ、そうした懸念にしても、米政府内で緊急警報を誘発するほどではない。当局者は指揮統制に関し、ワグネルの戦闘員もルカシェンコ氏もロシアの核兵器に手を出せない状態を保つことがプーチン氏の利益になると確信している。
ソ連崩壊後、ロシアの核兵器の管理は国防省第12総局が担ってきた。ベラルーシに配備される戦術核弾頭の管理が別の機関に委ねられることになれば驚きだと、専門家は語る。実際、今年春には12総局の高官がベラルーシを訪問した。
それでも、ルカシェンコ氏とプーチン氏の関係の近さ、そしてワグネルの反乱鎮圧でルカシェンコ氏が果たした予想外の役割を踏まえ、情報分析官は次の展開に神経を尖らせている。一部の米当局者の間では、プーチン氏が北大西洋条約機構(NATO)首脳会議中、ベラルーシ国内に展開するロシア軍に関して何らかの発表を行う可能性も懸念されている。
ただ、ロシアから今週大きな発表がなかったとしても、NATO内部では既にワグネルがベラルーシに勢力を広げる可能性に警戒感が高まっている状況だ。ポーランドは隣国ベラルーシでワグネルが戦力を再編するとの懸念から、欧州連合(EU)に国境警備強化のための追加資金を要求。ラトビアの首相は、ワグネルがベラルーシ国内の新拠点から欧州へ浸透を図る可能性を指摘した。リトアニアの大統領もワグネルの戦闘員を「連続殺人犯」と呼び、「いつベラルーシに現れてもおかしくない。彼らがいつ我々に牙をむくかは誰にも分からない」と述べた。
こうした国の首脳は7日、NATO事務総長やNATO加盟国の首脳に宛てた書簡で、「ロシアの攻撃的な行動や変化するベラルーシ情勢」がもたらす脅威について警告した。