中国、気球の飛行計画を中止か 米の撃墜後、一切打ち上げず
(CNN) 中国の気球が今年初期に米本土上空に飛来し、スパイ活動を疑われて米軍戦闘機が撃墜した以降、中国による新たな気球の打ち上げが確認されていないことが17日までにわかった。
米情報機関の分析に通じる多数の関係筋がCNNに明らかにした。気球の飛行計画を中断した兆候もあるとした。
米情報機関内では、中国共産党の指導陣は気球に米本土上空を横断させる意図はなかったとの見方を強めている。関係筋の1人によると、米本土への飛来が判明後、中国の気球運用担当者が懲戒処分を受けたという。
バイデン米大統領も今年6月、中国の習近平(シーチンピン)国家主席は気球の居場所を知って不意をつかれた状態になったと指摘。政治献金を募る米国内の集会で「習(主席)は、気球が米本土上空にいることを把握していなかったため撃墜された後、非常にろうばいした」とし、主席を何が起きたかわからずに困惑する「独裁者」に例える皮肉も放っていた。
米連邦捜査局(FBI)は2月に撃墜した気球の残骸を調べて分析。米国防総省は6月、気球は米本土上空を移動していた際、機密情報などを収集できなかったと結論づけていた。同省のライダー報道官は、この収集を阻止するため米側が必要な手立てを講じたことも明かしていた。
ただ、気球の撃墜は米中関係を一層後退させる一因ともなり、ブリンケン米国務長官が両国間の意思疎通に弾みをつけるため計画していた訪中も延期された。米中関係は当時、米下院議長の台湾訪問で対立がさらに先鋭化する局面にあった。
中国側は、気球の米本土上空への出現は「予想外であり、例外的な事態」との立場を一貫して主張。気球は気象観測など科学的な調査が目的のためであり、米国上空への飛来は、偏西風などが影響した「不可抗力」によるものと強調した。
一方、米中央情報局(CIA)で中国問題の上位アナリストを務めていたクリストファー・ジョンソン氏は、中国が気球の飛行計画を中断したとするのなら、対米関係を安定化させる中国流の方途の可能性があるとも分析。
米サンフランシスコで今年11月に予定するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での米中首脳会談の開催を準備するための一手とも読み解いた。
しかし、気球の飛行計画の中断がどれほど続くのかには議論の余地があるともした。11月のAPEC首脳会議の展開次第となることもあり得ると述べた。