しばらくすると、男は落ち着いた様子でカメラに向かって名を名乗り、自分は24歳だと語った。カメラはヘルメットに装着されているらしい。自分は父親だと男は言い、イスラエル兵を2人殺したと語って、勝利と殉教を神に祈った。
集団はここからバイクに乗り、ほぼ誰もいない道路を飛ばした。
イスラエル人の遺体が散乱する道路を通過すると、男は喜びの声を上げた。この場所にはほかのテロ集団が先に到達していた。バイクで角を曲がったところにあるバス停は、この日の攻撃の現場をとらえた別の映像にも映っていた。
その映像は、近くの音楽フェスティバル会場を襲ったロケット弾から逃れたイスラエル人の車の車載カメラがとらえたもので、この車が武装集団に近付いて銃撃される場面が映っている。銃弾は窓を突き抜けてフロントガラスが粉々に割れ、車は坂道を下って行った。ドライバーが殺害されたのはほぼ確実だった。時刻は午前7時40分過ぎを示していた。
ボディーカメラを装着した戦闘員の男がこの現場に到着したのはこの時だった。男の映像には車載カメラの車が見えている。
ガザのフェンスを突破してから65分間、武装集団はほぼ野放し状態でイスラエル国内を移動し続け、アイン・ハシュロシャとキスフィムを通過してほぼ16キロ移動した。
集団がレムのキブツに近い軍の基地に接近すると、男は距離を縮め、ゲートに近付くとイスラエル兵から奪った銃を発砲した。
基地から誰かが撃ち返した。
男は撃たれて悲鳴を上げ、地面に倒れた。呼吸が速く、浅くなるにつれ、カメラがかすかに前後に揺れた。
男にとっての攻撃はここで終わった。しかし10月7日のテロ攻撃は、その後、何時間も続いた。