(CNN) 英国の与党・保守党が地方選で大敗を喫した。年内のどこかで総選挙が行われる場合、同党が本物の苦境に陥りかねない状況にあることを示唆する結果となった。
全体の3分の1前後の結果が確定した段階で、保守党は地方議会で100議席超、英議会の下院議員を選ぶ補選でも1議席を失った。全国的な世論調査ではスナク首相と保守党の支持率が大きく後退しているが、今回の選挙結果でその正しさが示された形だ。
仮に明日総選挙を実施すれば、野党・労働党の勝利が確実な情勢ともなっている。
保守党は現状から何とか前向きな面を引き出そうとしている。選挙に携わる情報筋の1人は、「保守党にとって厳しい夜だが、(労働党党首の)キア・スターマー氏への愛がかけらもないのは明白だ」と述べた。
この言葉にはいくらかの真実が存在するかもしれない。保守党の敗北が必ずしも労働党の議席増につながっているとは限らないからだ。保守党の失速は、右派のポピュリスト(大衆迎合主義)政党リフォームUKを含むあらゆる政党に恩恵をもたらしている。
今回の結果を受けても、総選挙の実施が具体的にいつになるのかは分からない。時期を決定できるのはスナク氏だけで、12月17日までに総選挙を行うとみられる。
総選挙を行うべきタイミングについて、保守党の間では意見が割れている。ここまでスナク氏が約束しているのは、今年後半に実施するということだけだ。ただ現実は厳しく、スナク氏にとって選挙を行うのに適した明確な時期は存在しない。どのようなシナリオであれ、スナク氏に首相再任の見込みがあると考える人はほぼゼロに近いのが実情だ。
最近では、早ければ7月にも総選挙実施に踏み切る可能性があるとの臆測も浮上している。
夏場の選挙を支持する人々によると、このタイミングであればスナク氏は有権者により有効なアピールができるという。今週、英政府は報道向けの発表で、移民担当の職員らがアフリカのルワンダへ移送する亡命申請者を一斉検挙したことを称賛した。亡命申請者らが手錠をかけられ、車両に詰め込まれる写真は様々な反響を呼んだものの、政府が意図したメッセージは明確だった。つまり、自分たちは問題に真剣に取り組んでおり、策定した計画を進めているというメッセージだ。
政府が勝利を挙げて間もない現在の状況は、スナク氏による右派への反撃に寄与するかもしれない。右派は数カ月にわたり、移民問題でスナク氏に圧力をかけ続けてきた。選挙を遅らせればその分、世論に対して政策の不備を見極める時間を与えることになるだろう。
一方で、スナク氏は年末に目を向けるべきだと考える人々もいる。その間に事態を改善できるからというのがその理由だ。
スナク氏が前任者2人から混乱を引き継いだのは事実だ。ジョンソン元首相は数カ月に及ぶスキャンダルの後で不名誉な辞任。トラス前首相も物議を醸す経済政策が原因で英国史上最も短命の首相で終わった。
当然ながらこうした経緯は、国民に対するスナク氏の立場を困難にし、世論調査での低迷を招いている。とはいえ、同氏就任以降も事態は全く改善しておらず、このまま動かなければ一段の悪化につながる公算が極めて大きい。
実質的に、スナク氏が来年のこの時期も首相の座に就いていると考える人は一人もいない。同氏に近い人物たちですら、本人の残りの任期で悪影響を低減する以外に選択の余地はなくなっている。もちろん、何か予想外のことが起きて状況が一変する可能性は常にある。しかし見たところそうなる公算は小さく、2022年後半の就任以来、スナク氏は運にも見放され続けているのが実情だ。
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本稿はCNNのルーク・マクギー記者による分析記事です。