重度の火傷負った9歳女児も 緊急治療が必要な重傷者1万人、ガザを脱出できず
避難を必要とする1万人
世界保健機関(WHO)のヨルダン川西岸・ガザ地区代表、リック・ピーパーコーンさんによると、治療のためにガザから緊急避難させる必要がある患者は少なくとも1万人に上る。正確な数が把握できないことから、実際にはもっと多いはずだという。
「最も多いのは重度の外傷や脊椎(せきつい)損傷など戦争関連の負傷者だ。腫瘍(しゅよう)や心血管系疾患、呼吸疾患などの慢性疾患も多い」
今回の戦争が始まる前までは、1日に50~100人がガザ地区を離れてエルサレムやヨルダン川西岸で治療を受けていたという。しかし5月7日以降、患者は一人もラファ検問所を通過できず、重傷者が増えて絶望感が募る一方の状況にある。
「ラファ検問所はできるだけ早く再開する必要がある」とピーパーコーンさんは訴える。「さもなければ別の検問所や仕組みを設けるべき。これほどの重症患者を放置するわけにはいかない。ここから離れられずに亡くなった患者の数は現時点で推定できない」
ガザ南部のナセル病院小児科病棟でCNNの取材に応じたコーロウド・シャルキさんは、保育器から出すことを許された娘のマラクちゃんを初めて腕に抱いた。
マラクちゃんは4日前に生まれたばかり。医師によると、心臓に欠陥があって難しい手術を必要としているが、発電機や医療設備用の燃料が不足していてこの病院では手術ができないという。
「必要な処置はしてもらった」「けれど娘は早く(ガザから)転院させなければならないと言われた」。シャルキさんはそう訴え、「医師からは、あまり希望は持たない方がいいと告げられた。あまりにも辛(つら)い宣告だった」と涙を流した。