ドローン頼みのウクライナ軍、ロシア軍の食い止めに苦心 前線の兵士は最悪の事態懸念
「どれくらい時間が残されているのか、正確なところは分からない。仮に時間が残されているとして、の話だが」。そう語るのは偵察狙撃兵のカシェイ(コールサイン)だ。「ロシア軍はいま、可能な限り多くの兵員を前線に投入している。今後、どこかの時点で攻撃に出るはずだ。彼らは非常に遠くまで進軍できる。それこそ1日で」
カシェイは「敵が前進しているのは、現場で守備に当たる人員がいないためだ」「あそこに座っていたいと望む人間などいない。二度と戻ってこれない可能性が非常に高い」とも語った。
ドローン部隊は、過去数週間の撤退の様子を収めたビデオライブラリーにざっと目を通した。損耗と混乱の色が濃い。ウクライナ兵3人が1カ月前、ウクライナの支配下にあるとの助言を受けてセリダブの工場に入ったものの、建物を占拠するロシア兵から射殺された瞬間も捉えられている。
兵士の採用自体も問題となる。指揮官の一人によると、セリダブの防御は300人の新兵によって強化された。彼らは直接前線に送られており、塹壕(ざんごう)で基礎的な訓練を受ける見通しだ。複数の兵士は指揮系統のミスも増えていると指摘し、前線のウクライナ兵がドローンによる攻撃を受けたエピソードを明かした。ウクライナの指揮官2人が兵士の身元を確認し損なったためだった。
戦場の混乱と恐怖の中ではミスが付きものだが、ウクライナ兵がこれほどオープンで率直な口ぶりになるのは珍しい。以前であれば、彼らは夏に行われたロシア西部クルスク州への反転攻勢について強烈なプライドをのぞかせながら取材に応じていただろう。
コシアのコールサインを持つ別の偵察狙撃兵は「人手が足りない。私は独りきりだ。疲れ切っている」と吐露し、「自分の任務には愛着を持っているが、他の若者にも任務に愛着を持ってもらう必要がある。我々の国家は覚醒しているが、国民は目を覚ましていない。ここでは兵士たちが死んでいる。ごみのような状況だ」と吐き捨てた。
偵察狙撃兵のコシア/CNN