ドローン頼みのウクライナ軍、ロシア軍の食い止めに苦心 前線の兵士は最悪の事態懸念

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人員不足のウクライナ、頼みはドローン

ウクライナ東部ポクロフスク(CNN) 複数のドローン(無人機)の映像に捉えられたロシアの攻撃は連日、容赦なく続く。老朽化した装甲車数台が穴だらけの野原を横断し、明るい陽光の下、戦車1台がウクライナの攻撃ドローンによって食い止められた。しかし、車両2台は木々の列までたどり着き、冬のまばらな茂みの中に身を隠すべくロシア兵を降ろした。その数分後、降車して孤立した兵士たちをさらなるドローン攻撃が襲った。

最初の走行で損傷した別の戦車は木々の列を抜け、前進を続けている。隣接する開けた野原に飛び出した車体を見ると、一部の兵士がぼろぼろになった装甲にしがみついている様子だ。我々が目撃している惨劇は約16キロ先で起きているのだが、詳細なライブ映像に捉えられた光景や流血は奇妙に生々しい。

戦車が野原の半分を横断したところで、使い捨てドローンのスウォーム(群れ)が再び攻撃を実施した。戦車は減速した後、煙を上げて止まった。一回一回の攻撃で何人を殺害しようと、前進を続ける数少ないロシア兵には直ちに10人規模の援軍が加わると、ウクライナ側はこぼす。

ウクライナは数や損耗に対する許容度ではロシアに対抗できない。西側当局者は各地の前線の状況について、連日最大1200人が死傷していると主張する。東部前線周辺の兵士がCNNに語ったところによると、ポクロフスクではここ数週間、ウクライナの危機的な兵員不足が明白になっており、ロシアの野蛮な戦術が一貫して成功を収めているという。

ポクロフスク付近に展開するドローン部隊の指揮官、イースト(コールサイン)は「状況は危機的だ」とコメント。「一時しのぎの戦闘に当たる歩兵が足りず、ドローンが彼らの任務を担っている。脆弱(ぜいじゃく)地域への敵の侵入を食い止められない状況が頻繁に見られるのはこのためだ」と語った。

ポクロフスク付近に展開するドローン部隊の指揮官、イースト/CNN
ポクロフスク付近に展開するドローン部隊の指揮官、イースト/CNN

ポクロフスクの兵士はCNNの取材に、兵員不足が深刻化した結果、ロシアが大きな突破口を開く可能性があるとの懸念を口にした。進軍するロシア部隊に対峙(たいじ)する歩兵が不足していることから、ドローンを攻撃目的で使用せざるを得ない状況だと漏らす。

指揮官の一人によると、ロシアが10月に奪取したポクロフスク郊外の要衝、セリダブを守っていたウクライナの陣地はわずか六つ。これをもとに推計すると、作戦に関わっていた兵士の数は60人程度だったとみられる。ウクライナ兵はすぐさま包囲され、多くの死傷者を出しながら退却した。

ウクライナ兵が指揮官を批判したり、前線の厳しい分析を報道陣に伝えたりすることはめったにない。だが、ポクロフスク周辺の複数の兵士はロシアの攻勢の現状や、この地域における今後の見通しについて率直な分析を提示した。

トランプ次期米大統領の就任も不安材料だ。兵士らは米軍の次期最高司令官の気分を害さないよう細心の注意を払う一方、自分たちの戦闘の行方を心配している様子だった。兵士の一人は「発言は控える。私はストレートな物言いをするから」と語り、もう一人は就任式後の1月に和平交渉を行うのでは遅すぎるかもしれないとの懸念を口にした。

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