「未来はない」、停戦の見込みさえ希望の光にならず ウクライナ東部
(CNN) 停戦協定はウクライナにとって、結局のところ、大惨事になりかねないのだろうか。
これはウクライナの最前線の掩蔽壕(えんぺいごう)や包囲された町の廃虚で繰り返される切実な疑問だ。戦争による極度の疲弊から同国内では至るところで平和が切望されている一方で、多くの犠牲を払って学んだロシアの支配に対する不信感も根強い。
不安は多岐にわたる。停戦は続くのか。ロシアは軍備を整え直し攻撃を再開するために停戦を利用するだけなのか。領土をすばやく手に入れたことを考えれば、ロシアは停戦を望むのか。ウクライナの支援国が外交によって停戦を実現したと感じた場合、各国はウクライナに同じ軍事支援を提供してくれるのか。
第66機械化旅団の大隊指揮官、ボロディミル・サブリン氏の目の前の画面は、ウクライナにおける現代的でありながら従来通りの残酷な戦場の様子を物語っている。リマン市のあちこちで、小型で安価なドローン(無人機)が、砲撃を受けた塹壕(ざんごう)の上を飛び交う。そこには凍った泥やごみ、回収不能な人間の遺体が混在している。
CNNの取材に答えるボロディミル・サブリン指揮官/Rebecca Wright/CNN
サブリン氏は今週、CNNに対し、「今停戦したら、我々の状況は悪化するだけだ」と語った。「敵は復活し、新しい軍隊を編成し、再結集して再び攻撃を仕掛けてくるからだ」
サブリン氏が指揮する現場では、ロシアの容赦ない攻撃がウクライナ大きな弱点である歩兵不足を突き、犠牲者が増えている。サブリン氏の部隊がリマンの最前線で迫撃砲を発射する一方で、ロシア軍はリマンの南にある要衝ポクロウスクに進軍している。その包囲のペースは驚くべきもので、ひとたび陥落すれば、ロシア軍とドニプロやザポリージャといった主要都市の間に大きな集落はほぼなくなるだろう。
ここでは希望が広まっている。その一つの側面は、欧州や北大西洋条約機構(NATO)の軍がある種の平和維持部隊として前線地帯に駐留し、ウクライナに安全を保証するという考えだ。これはウクライナ当局が一貫して提起している。
欧州の防衛当局者は最近、同様の支援について「活発な議論」が行われているとCNNに語った。停戦に続いて欧州のNATO加盟国が非武装地帯に駐留するというのは、トランプ米政権のケロッグ担当特使が示す和平計画の主要原則だ。
サブリン氏はロシアが米国やNATOを恐れているため、「NATOがウクライナに軍隊を派遣できるなら、ウクライナの安全は保証されるだろう」と語った。
しかし、第66旅団に夕暮れが近づくにつれ、この考えは乗り越えられないほどの危険をはらんでいるように思えてくる。ロシアのドローンの脅威はあまりにも深刻で、太陽が地平線に傾き、その光が消える頃には砲兵隊に到達しかねない。
取材班を案内してくれる指揮官は、ロシアの監視ドローンが去ったかどうか、携帯型モニターで確認する。問題がないことを確認できるまで10分間とどまり、岩だらけの平原を通り抜けて樹木が生い茂る辺りまで急ぐ。そこでは老朽化した大砲がロシア軍に定期的に「制圧射撃」を行っている。
ここでは和平は真剣に考えなければならないものであり、地下に住む兵士たちは懐疑的だ。