「未来はない」、停戦の見込みさえ希望の光にならず ウクライナ東部
兵士の一人であるビクトル氏は「停戦の可能性は30%しかない」と話す。「前線の状況からすると停戦が実現するとは思えないからだ。とても難しいことだ」
もう一人の兵士、アンドリーはこう付け加えた。「(停戦の可能性は)40%だと思う。相手が勝利し、領土を奪っている。そして我々は、全般的に見て何も言えることはない」
数カ月前には繰り返し慎重に勝利を確約してきた兵士たちに率直の物言いが増しているが、前線の町に住む疲れ切った市民の一部にもそれは投影されている。
リマンの荒廃した通りを重い足取りで歩くラリサさん(72)は、「今日は19回攻撃を受けた」とCNNに語った。通りのコンクリートには砲弾が飛び散っている。
リマンは、2022年に始まったロシアの侵攻で最初に占領され、その年の後半にウクライナ軍によって解放された。しかし今は再びロシア軍の激しい圧力にさらされている。ラリサさんはなぜこの町を去らないのかと尋ねられると、「私は72歳で、ここから動きたくない。3人の兄弟全員がここに埋葬されているし、おば、おじ、父、母も全員ここに埋葬されている。去ることはできない」と涙ぐんだ。
CNNの取材に答えるラリサさん/Rebecca Wright/CNN
トランプ氏もバイデン前米大統領と変わらないだろうと語るラリサさんは、ロシアが意思決定者になることを望んでいる。
ラリサさんは、「誰もこの問題を解決できない。解決できるのはプーチン(ロシア大統領)が『もう十分だ、私はすでに多くの人を殺した』と言ったときだけだ」と話し、プーチン氏による和平が唯一の道かとの問いにうなずいた。
他の人々にとって、この10年間は混乱と喪失のときだった。
イネサさん(60)は、スラビャンスクの中央広場にひとり座っている。この町では、10年前に親ロシア派の分離主義勢力が市庁舎を占拠し、停戦や合意、侵攻を繰り返しながら、ウクライナ軍と交戦した。
イネサさんは、分離主義の混乱があったにせよ、10年前はまだ仕事と希望があったと語った。現在、スラビャンスクに残っているのはイネサさんと母親だけで、残りの家族は戦争によって世界中に離散しているという。同市はドネツク州でロシアの主要な標的とされている。
「今や未来はない。私たちには未来が見えない。誰が見えるだろうか。私はただ止めてほしい。爆撃を止めてほしい」(イネサさん)