カナダ総選挙、トランプ関税や「併合」の脅威が影を落とす
(CNN) カナダで現地時間28日に総選挙が行われる。関税や経済の不確実性、米国による「併合」の脅威などが選挙戦に影を落としている。
有権者は、与党・自由党を率いるカーニー首相に4年間の任期を与えるか、9年以上にわたる自由党政権の後に野党・保守党の政権交代を認めるかを決めることになる。
投票は、最東端に位置するニューファンドランド・ラブラドール州で現地時間午前8時半から始まる。
カナダと米国の不安定な関係が今年の選挙運動の雰囲気に大きな影響を及ぼしている。トランプ米大統領がカナダからの輸入品に課した関税がカナダ経済に大きな脅威を及ぼしているほか、カナダを「51番目の州」として併合するというトランプ氏の脅しはあらゆる政治信条のカナダ国民を怒らせた。
カーニー氏は3月、記者団に対し、「米国がカナダを支配するために我々を弱体化させ、疲弊させ、打ち砕こうとするあらゆる試みを拒否する。我々は自らの国の主人だ」と述べた。
カナダの国民はさまざまな政党に投票できるが、主な対立軸はカーニー氏が率いる自由党と、ピエール・ポワリエーブル党首が率いる保守党による争いだ。
カーニー氏は3月、トルドー前首相の辞任を受けて首相の座に就いた。当時の世論調査では自由党が選挙で大敗するとの見通しが出ていた。
カナダ銀行とイングランド銀行の総裁を務めた経歴を持つカーニー氏は、トランプ氏がカナダ製品の多くに関税を課し始めた時期に首相に就任した。
カーニー氏は米国に対して対抗的な姿勢を示し、前首相が米国に課した相互関税を継続した。米国からの貿易戦争と併合の脅威が増すにつれて、自由党の支持率は劇的に逆転し、保守党との差は急速に縮まった。

与党・自由党を率いるカーニー首相。最近の世論調査では自由党がリードしている/Rich Lam/Getty Images
カーニー氏は自身について中道派の経験豊富な専門家とし、経済の混乱期にカナダ経済を導けると打ち出している。

支持者を迎える野党・保守党のピエール・ポワリエーブル党首=23日、カナダ・ノバスコシア州/John Morris/Reuters
一方、保守党のポワリエーブル氏は今回の選挙について、普通のカナダ国民と、9年間にわたって政界を支配してきた「エリート」との戦いと位置付けている。
ポワリエーブル氏は「カナダ第一」を掲げて選挙戦を戦っており、政府の予算削減や官僚機構の合理化のほか、豊かな天然資源の活用を目指した環境関連法の撤廃などを訴えている。