ニューヨーク(CNN) 先週末、大富豪イーロン・マスク氏はツイッターを刷新して象徴的な鳥のロゴをXに変更する措置に踏み切った。同氏が長年愛用してきたプラットフォームの改革に向けた新たな一歩だ。
マスク氏は昨年後半にツイッターを買収した際、対話、ショッピング、エンターテインメントなど何でもできる「万能」アプリ、通称Xの構想を発表した。買収前の昨年6月にはツイッターの社員に向け、同アプリを中国の微信(ウィーチャット)のようにするべきだと発言。そこではユーザーが「基本的にアプリで生活できる」ようになると伝えていた。アプリが「日常生活にとって非常に便利で役立つ」ものだからというのが理由だ。
イメージアップ構想のはじまりは、1999年にマスク氏がX.comを立ち上げた時期に遡(さかのぼ)ることができる。マスク氏はX.comをあらゆるサービスを統合した金融プラットフォームにしたいと考えていたが、最終的には統合されてペイパルになった。
マスク氏が前々からこうした野望を掲げていたとはいえ――そして440億ドル(当時のレートで約6兆4500億円)をはたいて買収して以来、逆風が高まっているとはいえ――未来のスーパーアプリの実現とひきかえにツイッターのブランドを捨てるには、あまりにも危険が大きい。
たとえマスク氏がウィーチャットの代表的なサービス――日用品の注文やヨガクラスの予約、請求書の支払いや友人とのおしゃべりなど――をツイッターに追加したいと望んでも、実現までの道のりは長い。今でさえ同社の前には財政的な課題や競合他社からの挑戦が立ちはだかっており、大規模な拡張に乗り出すどころではない。ショッピング機能を追加した他社プラットフォームでもユーザーへの売り込みがなかなか進んでいないことからも、中国以外でスーパーアプリの需要がどれほどあるのか定かではない。
米調査会社フォレスターのリサーチ部門主任で、バイスプレジデントを兼任するマイク・プルー氏は、「マスク氏はXを万能アプリにしようと考えているが、それには金も時間も人材も必要だ――3つどれもが同社には欠けている」と投資家向けのメモの中で語った。さらにプルー氏は、ツイッターの名称を変えることで「マスク氏は文化的ボキャブラリーとして定着したブランド名の15年間にわたる歴史をいとも簡単に消し去り」、会社が危うい時期にいちから出直しを迫られるだろうとも付け加えた。
こんにちはX、さようなら青い鳥
Xのブランディングは以前からすでに始まっていた。
「Xコープ」という会社を通じてツイッターを買収したマスク氏は23日のツイートで、今後X.comをツイッターにリダイレクトさせると発表した(17年にはX.comのドメインをペイパルから買い戻したとも言われている)。
23日夜、ツイッター本社にはスタイルを一新したXのロゴが投影された。24日にはツイッターのウェブサイト上にも、鳥のロゴマークに代わってXが表示された。マスク氏はフォロワーにも、今後は「ツイート」ではなく「x’s」と呼ぶよう指示までしている。
リンダ・ヤッカリーノCEO(最高経営責任者)の23日のツイートも、マスク氏の経営方針をあらためて伝えた形だ。「Xは、音声、動画、メッセージ、決済/銀行機能を中心とする究極の交流活動の未来図だ――アイデア、モノとサービス、チャンスをやり取りする世界的マーケットプレイスを作り出す」
IT界のレジェンドとよばれるジャーナリストで、マスク氏の伝記を執筆したウォルター・アイザックソン氏も23日にツイートし、マスク氏が買収以前から数十年来温めていた独自のX.com構想をツイッターで実現したいと語っていたことを明らかにした。同氏によれば、買収直前の昨年10月某日午前3時30分にマスク氏から携帯メッセージがあり、「ツイッターに後押しされる形で、X.comの本来の目標をついに実行に移すことができる。非常に楽しみだ!」と書かれていたという。