チョコに世界のスパイスを 「ヴォージュ」創業者に聞く
マルコフさんはテネシー州のバンダービルト大学で化学と心理学を専攻し、卒業と同時に料理と菓子作りの修行を志してパリへ。有名シェフのフェラン・アドリア氏の助言を受けて、東南アジアやオーストラリアに旅をした。
チョコに興味を持つきっかけとなったのは、パリのヴォージュ広場にあるレストラン「ランブロワジー」で出会った味。チョコに生クリームなどを混ぜた「ガナッシュ」を凍らせ、衣を付けて揚げた菓子だった。ドーナツのような皮の中から、溶けたチョコがあふれ出す。その食感に感動したという。
帰国後、テキサス州ダラスでおじのカタログ販売会社に勤めたマルコフさんは、チョコの商品選びを担当して、品ぞろえの貧しさに驚く。砂糖や人工香料を放り込んだだけのつまらない商品ばかりだった。
マルコフさんの手元には、旅先で買い集めたスパイスや、インド先住民のナガ族が作ったトラの歯のネックレスがあった。ある夜、台所に立ったマルコフさんはカレーとココナツのトリュフを作り、それを「ナガ」と名付けた。その瞬間、目の前がぱっと開けて、「チョコレートを使って物語を伝えよう」という道すじが浮かび上がったという。
サフランとホワイトチョコ、砂糖の結晶でスペインの巨匠ガウディのモザイク作品を表現したり、パプリカとショウガを組み合わせたり――。旅の思い出を振り返りながら、その夜のうちに20種類のチョコを作り上げた。