土砂崩れで家族失った青年、起業して環境問題に取り組む シエラレオネ
(CNN) 西アフリカのシエラレオネで2017年に起きた土砂災害で家族を失い、森林破壊がもたらす危険を思い知った青年が、環境保護を目指す事業を起こして大きな成果を出している。
シエラレオネの首都フリータウン郊外では17年8月、豪雨による大規模な土砂崩れで1100人以上の死者が出た。
流失した集落の中に、アルハジ・シラジ・バーさん(20)が養子に迎えられていた家もあった。バーさん自身は夜勤に出ていて助かったが、翌朝帰宅しようとすると道路がふさがれていた。数時間後、家族はだれも助からなかったことを知らされた。
バーさんはフリータウンから260キロ離れた遠隔地の村で生まれた。12歳の時に父を亡くした後、バスに乗ってフリータウンへたどり着き、路上で4年間暮らしたという。水くみや洗濯の仕事で食いつなぐ日々だったが、「怖いものはなかった」と振り返る。
そんな時にテレビの報道で、土砂災害の被害を大きくしているのは森林伐採やごみ投棄の問題だと知った。
世界各地の森林伐採の状況を監視するサイト「世界森林ウォッチ(GFW)」によると、フリータウンでは01年から15年の間に森林の31%が消えた。樹木のない斜面は土砂崩れや浸食が起きやすくなる。また同市にはごみ収集のサービスがないため、市民が路上や側溝、河川に捨てたごみで排水が滞り、洪水の被害を拡大させている。
バーさんはこの状況を何とかしなければと立ち上がった。米国の貧しい家庭に生まれながら現在は著名司会者、慈善活動家として活躍するオプラ・ウィンフリーさんを目標にすると心に決めた。
手元にあった約2200円の全財産で、プラスチック袋の問題に取り組むことにした。原料の70%にバナナの葉を使ったリサイクル可能な袋を作り、地元企業に販売する。袋には各企業のロゴを印刷した。
バナナの葉を70%原料に使ったエコバッグ/Courtesy of Alhaji Siraj Bah
バーさんの立ち上げた会社はこれまでに約25万枚の袋を作り、次の事業として木炭の代替品作りに乗り出した。
シエラレオネでは大半の家庭が調理や暖房に木炭を使う。木炭用に多くの樹木が伐採されるうえ、大気汚染による健康被害も懸念されている。
バーさんはユーチューブを参考に、煙を出さずに炭より4時間も長く燃え続ける燃料用のブロックの作り方を習った。農家などからココナツの殻とサトウキビ、もみ殻、やしの種を集めてすりつぶし、でんぷんで固めてから機械で成形する。
ココナツの殻やもみ殻などを利用して作られた燃料ブロック/Courtesy of Alhaji Siraj Bah
38人の従業員を雇い、これまでに120トンの燃料ブロックを生産した。1万5000本の樹木を伐採から救ったことになるという。
ココナツの殻を集める作業に雇った子どもたちの一部は、自分の収入で学校へ通えるようになった。
バーさんは18年にアフリカの若い起業家に贈られるアンジシャ賞を受賞した。エンジェル投資家から提供された2000ドルの資金で、燃料ブロックの生産を加速させる機械を購入し、20年にはギニアやセネガル、リベリアにも進出する予定だという。
「不可能なことは何もない」「だれかが20ドルや10ドル、5ドルの資金でできたことなら、0ドルからでもできるはず」と、力強く語った。