「SWIFT」とは何か、ロシアが最も恐れる武器となりうる理由

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ロシアをSWIFTから排除する案が浮上している/Adobe Stock

ロシアをSWIFTから排除する案が浮上している/Adobe Stock

ロンドン(CNN Business) ある人はそれを「最終兵器」と呼ぶ。

西側諸国がロシアのプーチン大統領によるウクライナ侵攻の号令を阻止しようと、前例のない制裁パッケージをちらつかせる中、クレムリン(ロシア大統領府)を恐怖で震え上がらせそうな手段が一つある。国際的な銀行間のシステムからロシアを切り離すという切り札だ。

米国の議員らはこの数週間、ロシアを国際銀行間通信協会(SWIFT)から排除する可能性を示してきた。SWIFTとは世界各国の金融機関数千社を結ぶ安全性の高いネットワークを指す。

これに対してロシアの有力議員らは、そんな事態になれば欧州向けの石油やガス、金属の輸出が止まることになると反発している。

ロシア国営タス通信によると、同国のジュラフレフ上院副議長は25日、「もしロシアがSWIFTから外されれば、我々は(外国の)通貨を受け取れなくなるが、欧州諸国を始めとする買い手は石油やガス、金属といった重要な物品を受け取れなくなる」と語った。

SWIFTとは何か?

1973年に設立されたSWIFTは、従来使われていたテレックスによる通信を置き換え、安全にメッセージや支払い指図を送る手段として、1万1000社以上の金融機関に利用されている。世界的にこれに代わる存在はなく、国際金融では必須の送金手段となっている。

ロシアをSWIFTから排除すれば、金融機関は同国との間で資金の出し入れがほぼできなくなる。これはロシア企業や外国の顧客、特にドル建てで石油やガスを輸入する買い手に突如ショックを与える結果となる。

「(ロシアの)切り離しはすべての国際取引を終わらせ、通貨の乱高下を引き起こし、大量の資本逃避を招く」。フィンランド国際問題研究所の客員フェロー、マリア・シャギーナ氏は昨年、カーネギー・モスクワ・センターでの論文でそう指摘した。ロシアの財務相経験者アレクセイ・クドリン氏は2014年、ロシアがSWIFTから排除されたら同国経済が5%縮小するとの推計をまとめている。

ベルギーを拠点とするSWIFTは、25人のメンバーから構成される委員会で統治される。そのうちの1人はロシア中央清算機関で経営委員会議長を務めるエディ・アスタニン氏だ。ベルギー法の下で法人化された「中立な事業体」を自称する組織であり、欧州連合(EU)の法規制に従う必要がある。

ロシアが排除されたら何が起きる?

SWIFTから排除された国には前例がある。

12年、SWIFTはイランの銀行を排除した。EUが核開発計画を巡ってイランの銀行に制裁を科したことを受けた措置だった。シャギーナ氏によると、これによりイランは石油輸出収入の約半分、貿易の3割を失う結果となった。

SWIFTは26日に声明で、「SWIFTはそのコミュニティーの集団的利益のために設立、運営される中立的な国際組合だ。国や個々の主体に制裁を科す決定は、それを行うのに適格な政府機関や議員に委ねられる」と述べた。

米国の同盟国の間で、対イランと同様の措置をロシアに科すことに、どの程度支持が集まっているのかは不明だ。ロシアが排除された場合、最も失うものが大きいのは米国とドイツだ。シャギーナ氏によると、ロシアの銀行との間でSWIFTを介したやりとりが最も多いのは米国とドイツの銀行だという。

デンマークのコフォズ外相は24日、ロシアがウクライナに侵攻した場合、EUは「前例のない包括的な制裁」で対抗する準備ができていると述べた。EUのボレル外交安全保障上級代表は25日、制裁が「西側、少なくともEUが持つ最も大きな影響力」だとの認識を示した。

英国のジョンソン首相は同日、議員に対し、英政府はロシアをSWIFTから外す可能性について、米国と議論していると述べた。

ジョンソン氏は「それが(ロシアに対する)非常に有力な武器であることは間違いない。ただ、それは米国の支援があって初めて展開可能だ。我々はそれについて議論している」と語った。

ロシアの対抗手段

ロシアは近年、SWIFTから排除された場合の傷を浅くするための措置を講じてきた。

2014年にクリミア半島併合後に西側諸国から制裁を受けたのを期に、ロシア独自の決済システム「SPFS」を立ち上げ、ロシア中央銀行によれば現在約400社が利用している。シャギーナ氏によると、国内送金の20%がSPFSを利用しているが、メッセージの量は限られ平日のみの運用となっている。

中国で始まったばかりの国際銀行間決済システム(CIPS)もSWIFTの代替手段の一つとなるかもしれない。さらには暗号資産(仮想通貨)を通じた支払いが必要となる可能性もある。

だが、こうした方法は魅力的な代替手段とは言えない。

タス通信によれば、ジュラフレフ氏は「SWIFTは欧州の会社であり、多くの参加国からなる組合だ。切り離しの決定をするには全参加国の団結した決定が必要だ。米国と英国の決定だけでは明らかに不十分だ」と語った。

「他の国、特にロシアとの貿易が占める割合が高い国々が遮断を支持するかはわからない」(同氏)

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