米国人が転職先に求める6つの条件とは
米国人は転職を決意する際に、より良い報酬やワーク・ライフ・バランスなどを数年前よりも重視していることが、米世論調査会社ギャラップ社による米国の従業員1万3000人超を対象とした最新調査で明らかになった。前回の調査は2015年に実施された。
ギャラップの職場マネジメントリサーチ&ストラテジーのディレクター、ベン・ウィガート氏は、企業が優秀な人材を獲得するためには、6つの条件を考慮することが重要だと指摘。「説得力のある求人は、これらをほぼ満たす必要がある」と述べている。
以下、求職者が最も重視する6つの条件を、優先順位の高い順に挙げる。
1.報酬
今回の調査で、新しい仕事に求める条件として最も多かった回答は「報酬や福利厚生の大幅な向上」で、64%が「非常に重要」と答えた。15年調査時の41%(4位)から上昇した。従業員の優先順位が変化した理由のひとつとして、ウィガート氏は「労働者は現在、自分たちが売り手市場にいることを認識している」と説明した。
2.ワーク・ライフ・バランス
「ワーク・ライフ・バランスとウェルビーイング(幸福や健康)」の重要性も高まっている。これらの条件を「非常に重要」と答えた回答者は61%に上り、15年時の53%を上回った。「バーンアウト(燃え尽き症候群)を経験していない労働者にとっても、リモートワークの導入が大幅に増加したことで、仕事の柔軟性といった選択肢の価値に対する意識が高まっている」とウィガート氏は指摘する。
3.自分の強みを発揮できること
回答者の58%が、「自分の得意なことができる」仕事を見つけることが重要だと答えた。ウィガート氏は「採用担当者は、候補者が業務のどの分野に意欲的なのかを理解する努力を惜しんではいけない。そのうえで候補者に対し、現実的な仕事内容、つまり日常業務がどのような感じなのか、誰と働くのか、何を期待されているのかを説明すべきだ」と述べている。
4.雇用の保証
転職する場合は、雇用の保証と安定性を求めると回答した人は、15年調査時と同じ53%だった。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)時に個人、雇用主、業界が経験した不安定さを考えると、求職者が安定をどの程度広く定義しているかを正確に把握するのは難しい。
だがウィガート氏は「この2年間、健康や経済、今後の仕事のあり方について、日々不確実性を抱えながら生活してきた以上、雇用主は、従業員がいかなる状況でも頼りにできるという安定感を見せることが重要だ」と指摘した。
5.求職者の信条に沿ったワクチン接種の方針
新型コロナウイルスのワクチン接種の義務化を巡っては、各人で信条が異なる。だが回答者の43%は、新しい雇用主が自分の信条と一致する方針を持つことが重要だと答えた。
ギャラップによれば、今回の調査は、米連邦最高裁が、大企業に新型コロナウイルスワクチンの接種や検査を義務づけるバイデン政権の措置の差し止めを命じる前に実施された。
6.多様性と包括性
42%の回答者が、多様性と包括性は非常に重要だと回答した。15年の調査では、これらは選択肢になかったため、前回と直接比較することはできない。
ウィガート氏によると、従業員やリーダーシップの多様化、すべての人を受け入れる文化を創造するという企業の継続的な取り組みに関し、従業員は口先だけの決まり文句ではなく、真の変化を求めているという。そのうえで同氏は「採用担当者は、そうした変化や関与について説明できるよう準備する必要がある」と指摘した。
ここに挙げた6つの条件は、米国の求職者全員にとって概ね重要だが、業界、スキル、場所によって、これらの優先順位は変わり得る。
ウィガート氏は、企業が最も優秀な人材を確保するためには、採用候補者が自社でどんな仕事をしたいのか、何を望んでいるのかについて注意を払うこと、そして企業側が彼らに何を提供できるのかを伝えることが大事だと述べている。
調査は21年10月16日から28日にかけて、無作為に抽出した18歳以上のフルタイムとパートタイム従業員1万3085人を対象に実施された。