米の核戦力運用担う空中指揮管制機の飛行増大、侵攻前後に
(CNN) 有事が発生した場合、核弾頭も搭載可能な弾道ミサイル発射の指揮系統も任せられている米軍の空中指揮管制機「E6」の1日の出動回数が、ロシアによるウクライナ侵攻以降、増大していることが5日までにわかった。
米政府当局者がCNNに明らかにした。ロシア侵攻を受けて打ち出した対抗措置の一環とみられる。
米ボーイング社製の機材を改造したE6機の飛行増加はこれまで公にされてこなかった。
核戦力を一元的に運用管理する米戦略軍のリチャード司令官(海軍大将)は、同軍の即応態勢などに変化はないとしながらも、先週になり飛行回数が増えたとは認めた。ロシアのプーチン大統領がウクライナ侵攻計画に関連し自軍の核兵器戦略部隊の出動態勢を一段と高めた指示が出される前だったともした。
E6機の飛行増加はロシアがウクライナ侵攻に踏み切った先月24の前日に始まっていた。複数の米政府当局者は当時、侵攻は数時間内に起こり得るとも警告していた。
航空機の飛行経路などの情報を追う専門サイトによると、E6機の編隊は先月23日以降、1日あたり約7回飛び立った。航空機の移動ポイントの通過に伴って発信する信号量の分析による。
これ以前の飛行回数は1日3~4回だったという。
同機は、米軍の最高司令官である大統領を含めた軍首脳陣や下された命令を実行する戦略あるいは非戦略部隊との通信業務なども担う。
米国の核戦力を担う一翼である弾道ミサイル搭載の潜水艦部隊、地上配備のミサイル部隊との高度な機密扱いの通信任務も引き受ける。必要な事態が生じれば、地上配備型の弾道ミサイル発射も可能な指揮官制の権限も付与されている。
米国の科学者連盟の核情報担当責任者は、E6機の飛行任務は通常も実施しているが、今回の出動回数の増加はウクライナ侵攻が同国に近接する米国の北大西洋条約機構(NATO)の同盟国にも波及しかねないリスクに対処する追加の予防措置の可能性もあると推測。「米国は監視している、とのロシアへの意思表示かもしれない。警戒態勢の高まりを伝える方途でもあろう」と述べた。
米軍は、大統領からの命令があった場合、これに数分内に応じるため保有する弾道ミサイルの一部を高度な発射態勢の状態に保っている。米国への攻撃が確認された場合、大陸間弾道ミサイルを発射する選択肢も準備している。