世襲のビリオネアの相続資産、向こう20年で770兆円に UBS推計
ロンドン(CNN) 直近の年に資産10億ドル(約1480億円)を超える「ビリオネア」となった人々の資産について、相続を通じて得た富が事業によって獲得した額を上回っていることがスイス金融大手UBSの11月30日の報告書で分かった。同行が約10年前、世界の富豪の資産追跡を開始して以降、初めての現象だという。
また財産を引き継いだビリオネアらは、自身の親たちよりも世界経済が直面する好機や課題に注力する公算が大きく、クリーン・エネルギーや人工知能(AI)に投資を集中させる傾向が強いことも明らかになった。
UBSのグローバルウェルスマネジメント部門で戦略顧客の管理を担当するベンジャミン・カバリ氏は「巨万の富の譲渡が大変に勢いを増している。裕福な起業家の多くが高齢になっているためだ」と指摘。向こう20年でこの傾向に拍車がかかると予想した上で、その間1000人を超えるビリオネアが推計で5兆2000億ドル(約770兆円)を自分たちの子どもに譲渡するとの見解を示した。
世界のビリオネアの半数を顧客として数えるUBSは、今年4月までの1年間で53人のビリオネアが1508億ドルを相続したと明らかにした。一方、一代で新たにビリオネアとなった84人が同時期に獲得した資産は1407億ドルだった。
世界全体のビリオネアの数は7%増加して2544人。インフレを考慮する前の時点で、彼らの資産の合計は9%増の12兆ドルとなっている。
この総額は依然として、2021年に記録した13兆4000億ドルの過去最高額を下回る。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)が明けて株や不動産といった資産の価値が急回復したこの年は、世界のビリオネアの数も2686人に増えた。
報告書は、22年から23年初めにかけて新規株式公開(IPO)が低調だった状態も反映している。このために起業家らは、自らの事業を上場して資産を増やす機会が限定された。
UBSで家族並びに組織の資産管理を担当する最高投資責任者(CIO)、マックス・クンケル氏は、「経済的、地政学的及び政治的な不透明性が、起業家による最近の富の創造を困難にしている」と分析した。