タイタニック号探索の潜水艇事故から1年、ツアー再開への動きも

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タイタニック号の残骸近くの海底から引き上げられた潜水艇「タイタン」の破片/Paul Daly/The Canadian Press/AP

タイタニック号の残骸近くの海底から引き上げられた潜水艇「タイタン」の破片/Paul Daly/The Canadian Press/AP

ニューヨーク(CNN) 豪華客船タイタニック号の残骸を探索するツアーの潜水艇「タイタン」が深海で大破した事故から、18日で1年。ツアー運営会社の米オーシャン・ゲートは昨年7月に営業を停止したが、安全性を掲げる他社がツアーの再開を目指す動きも出ている。

民間用潜水艇メーカーの米トライトン・サブマリンズは、事故を受けて深海探査への投資が強化されたと主張する。

米紙ウォールストリート・ジャーナルによれば、タイタンの事故の数日後、不動産業界の米富豪ラリー・コナー氏はトライトン・サブマリンズの最高経営責任者(CEO)との電話で、タイタニック号の深さまで到達するような潜水艇ツアーが安全に実現できることを世界に示すため、新たな潜水艇をつくるよう促したという。

コナー氏は同紙とのインタビューで、「海は強大な力を持つが、適切なやり方でかかわれば素晴らしく、楽しく、人生を変えるような経験ができる。それを世界中の人々に示したい」と話した。

トライトン・サブマリンズの報道担当者がCNNに語ったところによると、今のところツアーは計画段階で、まだ日程を公表できる局面には達していないという。

オーシャンゲートが残したもの

オーシャンゲートは有人深海探査の業界で急成長した企業だが、規制を逃れたり、業界の基準に抵抗したりする異色の存在だった。

事故で死亡した同社の創業者ストックトン・ラッシュ氏は、タイタンの材料に採用した安価なカーボンファイバー(炭素繊維)が従来のチタン素材ほど安全でないと専門家に指摘された後も、安全性を主張し続けた。

ラッシュ氏はかつて米ジャーナリスト、デービッド・ポーグ氏とのインタビューで、安全を追求しすぎるのは無駄でしかないと力説。「安全だけを望むならベッドから出なければいい。車に乗らなければいい。何もしなければいい」と言い放っていた。

これに対してトライトン・サブマリンズは事故からの1年間、オーシャンゲートとの違いを印象付けようと努めてきた。(1)オーシャンゲートは業界内でたびたび警告を受けながら、それを無視して規制の網の目をくぐる異端児だった(2)同社の潜水艇の設計は極めて実験的で、他社が踏襲することはあり得ない――というのが主な論点だ。

トライトン・サブマリンズへの投資家には、米ヘッジファンド創業者のレイ・ダリオ氏、カナダの映画監督ジェームズ・キャメロン氏らが名を連ねる。

同社は、オーシャンゲートが避けて通った第三者機関による船体の検査も実施し、「深海では妥協などあり得ない」との立場を鮮明にしている。

死のリスクが持つ意味とは

深海探査の技術はまだ初歩段階にある。だが冒険旅行には常に死の危険が伴い、その危険が需要を刺激するという一面も否定できない。

世界最高峰エベレストでは毎年何人かの登山者が命を落とすが、多くの死者が出たシーズンの翌年は関心が高まり、登山者の数がはね上がるという。

ただしツアー会社によれば、最近はリスクを抑えるため、追加料金を支払ってでも安全性を確保しようとする傾向がみられるという。

英国の富裕層向け旅行社ブラウン・アンド・ハドソンの創業者フィリップ・ブラウン氏によると、タイタンの事故が起きた直後、オーシャンゲートが営業を停止するまでの間、タイタニック号ツアーにはまだ多くの希望者が順番待ちを続けていた。ツアーの人気はむしろ高まったほどだという。

ブラウン氏は17日のインタビューで、「限界に挑戦する冒険への関心が消えることはないだろう」と話す一方、最近はリスクに対する旅行者の意識が大幅に高まっていると指摘した。

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