キャセイ航空、乗客2人を搭乗禁止に リクライニングめぐるもめごと受け
(CNN) 香港のキャセイパシフィック航空が乗客2人を搭乗禁止にしたことが分かった。座席のリクライニングをめぐる口論がゼノフォビア(外国人嫌い)的な侮辱にまで発展したことを受けた措置だという。
この事案は17日、香港からロンドンに向かうフライト中に発生した。中国本土から来た女性の乗客がSNSに投稿した動画でその体験を語った。
この女性によると、「後ろに座っていた女性が夫のテレビの視界を遮るから座席を戻すようにと頼んできた。丁寧に断ると、彼女が私のひじ掛けに足を伸ばし、腕を蹴り、狂ったように悪態をつき始めた」。
客室乗務員が間に入り、女性に座席を戻すよう提案したが、この女性は拒否。事態は悪化した。
女性は「(後ろに座っていた女性客が)私の広東語があまり上手でないことに気付くと、私を『中国本土の女の子』など軽蔑的な呼び方をしたり、意地の悪い言葉を投げかけたりし始めた」と語った。
香港の人々は主に広東語を話し、中国本土の人々は主に北京語を話す。
「私が録画を始めると、後ろにいた(女性の)夫が私のひじ掛けに手を押し付け、激しく揺さぶり始めた。自分のパーソナルスペースが完全に侵害されたと感じた」と続けた。その後他の乗客が介入したという。
女性がアップロードした映像では、北京語で「あなたはもう十分大人なのに、なぜ若い女の子をいじめるの」という声や、広東語で「香港人を恥ずかしめている」との叫び声も聞こえる。
何人かの乗客が声を上げた後になってようやく客室乗務員は席の移動を認めた。この女性は「馬鹿げていると思った。もし誰も私の肩を持ってくれなかったらどうなっていたか」と語った。「大手航空会社としてキャセイはこうしたもめごとの対処方法を知っているはずではないのか。乗客によって異なる扱いをすれば、何らかの結果を招くのではないか」
キャセイは21日の声明で謝罪するとともに、他の乗客の権利を軽視するいかなる行為も一切容認しないと述べた。さらに、この事案に関与した2人の乗客について、今後キャセイグループのすべてのフライトの搭乗を拒否することも明らかにした。
今回の事案は飛行機の座席のリクライニングに関するマナーをめぐる長年の議論に拍車をかけるものだ。一方で、政治的見解と文化的アイデンティティーの違いによる中国本土と香港の人々の間の緊張をも浮き彫りにしている。こうした対立は香港で2019年に起きた民主化デモによって一層顕著になっている。