「世界で最も孤立した部族」と接触図る、米国人観光客を逮捕 疫病持ち込む恐れ

アンダマン・ニコバル諸島に属する北センチネル島を捉えた人工衛星画像=24年4月11日/Maxar Technologies/Getty Images/File

アンダマン・ニコバル諸島に属する北センチネル島を捉えた人工衛星画像=24年4月11日/Maxar Technologies/Getty Images/File

(CNN) ベンガル湾に浮かぶ孤島へ渡航し、世界で最も孤立した部族の一つ「センチネル族」との接触を図ったとして、米国人観光客が逮捕された。

インド警察がCNNに明らかにしたところによると、ミハイロ・ビクトロビッチ・ポリャコフ容疑者(24)は先月29日、謎に包まれたセンチネル族が暮らす北センチネル島へ違法渡航した。

北センチネル島はインド本土から約1200キロ離れたアンダマン・ニコバル諸島に属し、面積は米国のマンハッタン島とほぼ同程度。インドの法律では、センチネル族の生活様式を維持し、彼らが免疫を持たない現代の病気から保護するため、北センチネル島への訪問を禁じている。

アンダマン・ニコバル警察の幹部がCNNに語ったところによると、ポリャコフ容疑者は島に到達したものの、センチネル族と接触した様子はない。戻る際に地元の漁師に目撃され、2日後に逮捕されたという。

警察はポリャコフ容疑者からゴムボートとモーターを押収した。現時点では訴追されていない。

米国務省の報道官はCNNの取材に「米国民がインドで拘束されたとの報道は認識している」と述べたものの、これ以上のコメントは控えた。ポリャコフ容疑者が弁護士を雇っているかどうかは不明。

センチネル族が現代社会と接触した例は数えるほどしかなく、部外者を激しく拒むことで知られている。極めて孤立していることから人口も正確には分かっておらず、数十人から数百人まで諸説ある。

過去にはセンチネル族との接触で死者が出たケースもある。2018年には、米国人宣教師のジョン・アレン・チャウ氏が地元住民をキリスト教に改宗させようと北センチネル島に上陸したが、部族民に殺害されたと報じられている。

地元警察の幹部は「(ポリャコフ容疑者が)接触しなかったのは幸運だった。接触していれば、同じ運命をたどっただろう」と指摘した。

孤立部族の保護に取り組む非営利団体「サバイバル・インターナショナル」のディレクター、キャロライン・ピアース氏は、ポリャコフ容疑者の行為を「無謀かつ愚か」と非難する。

ピアース氏は声明で「この人物の行動は自らの命を危うくするだけでなく、センチネル族全体の命までも危険にさらした」と述べ、「未接触部族にインフルエンザやはしかのような一般的な外部の病気に対する免疫がないことは、現在では周知の事実だ。こうした病気が流行すれば、絶滅してしまう可能性もある」と言い添えた。

警察によると、ポリャコフ容疑者は今回の渡航を入念に準備しており、アンダマン諸島を2度訪れたのち、3度目の訪問で北センチネル島へ向かったという。

警察幹部は「これまでの取り調べで判明したところでは、容疑者は冒険好きを自称している。部族のためにソフトドリンクの容器を置いてきたと供述しているが、実物はまだ確認できていない」と説明。警察はポリャコフ容疑者の携帯電話と撮影機器に加え、島で採取したとされる砂の入った瓶も押収した。

世界で最も孤立した部族

世界には100を超える未接触部族が存在する。その多くはアマゾン熱帯雨林に集中しているが、サバイバル・インターナショナルによると、センチネル族は「世界で最も孤立した先住民族」とされる。判明している情報の大半は、矢の届かない沖合に停泊した船からの観察や、過去の数少ない当局との接触で得られたものだ。

サバイバル・インターナショナルによると、センチネル族は熱帯雨林で狩猟したり、海岸沿いで槍(やり)や弓矢、自作の細いカヌーを用いて漁を行ったりして暮らしている。大人数で住む共同小屋や、海岸にあるより簡素なシェルターなど、三つの集団に分かれて住んでいると考えられている。

センチネル族と最初に接触したのは英国人。1800年代後半の出来事だった。センチネル族は隠れようとしたものの、6人が捕らえられ、アンダマン諸島の主要な島へ連行された。

1956年に制定されたインドの法律では、北センチネル島など先住民族が暮らす島への部外者の渡航を禁じている。

90年代初頭に短期間だけ友好的な交流があったのを除き、センチネル族は災害時であっても外部との接触を頑なに拒んできた。

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