トランプ氏、関税政策めぐる米紙社説の正しい指摘にかみつく
ニューヨーク(CNN) 関税政策をめぐり、トランプ米大統領と米紙ウォールストリート・ジャーナルが再び対立している。
トランプ氏は、26日に公開された同紙の社説を激しく非難した。同紙は複数の証拠を挙げたうえで、対カナダ・メキシコ関税によって自動車産業が盛んなミシガン州が打撃を受けると述べている。
社説は「もし目標が米国の自動車産業労働者とミシガン州の共和党候補者に損害を与えることなら、ぜひとも進めるといい、大統領」と述べている。社説は、ミシガン州で組み立てられる自動車とトラック全台にメキシコとカナダからの輸入部品が使われていると正しく指摘。フルサイズSUV(スポーツ用多目的車)の場合、製造コストが9000ドル(約134万円)増加するという調査結果を引用している。
確かな数字に基づくこの推定について、トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で攻撃し、いくつもの虚偽の主張を展開した。
トランプ氏は「関税によって大量の自動車製造拠点がミシガン州に集まることになる」とし、すでに他国での自動車工場の新設が多数止まっており、ミシガン州と米国全体は大勝利を収めたとうたっている。
米国とカナダ・メキシコ間の自由貿易協定の下、組み立て工程で部品や車両が国境を越えて自由に移動できることから、自動車メーカーは数十年にわたり、北米が単一市場であるかのように事業を展開してきた。実業家のイーロン・マスク氏が経営するテスラを除き、関税の脅威を理由にカナダやメキシコなどの国での工場建設計画を中止した自動車メーカーはまだない。
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トヨタの「RAV4」を米ミシガン州デトロイトへ運ぶ自動車運搬車=カナダ・オンタリオ州/Jeff Kowalsky/AFP/Getty Images
そして、生産拠点がミシガン州に戻ったことはない。
関税をめぐってトランプ氏とウォールストリート・ジャーナルの社説が衝突したのは今回が初めてではない。同紙は1月、カナダ・メキシコへの関税案を「史上最も愚かな貿易戦争」とこきおろした。トランプ氏は数日後、大統領執務室でこの社説について記者から問われた際、その場に同席していた、同紙を所有するメディア企業の最大の個人株主ルパート・マードック氏の方を向き、「彼と話をするつもりだ」「すぐそこのウォールストリート・ジャーナルには何度も行ったことがある」と笑顔で応じた。