注意散漫? 創造的? さまよう思考が果たす役割
カウフマン氏もこの点に同意する。マインドワンダリングによって心に余裕ができ、創造性や計画性などが心の中に生まれる余地ができるという。
このため同氏は、企業においても、従業員が目の前の課題からいったん離れ、思考をさまよわせる時間が必要だと説いている。眼前の問題に過度に入れ込むとひらめきの瞬間を逃してしまう。同氏は、「ハッとするような名案が思い浮かぶのは、課題に向って一直線に集中している時ではない。意識を自由にさまよわせて、多様な可能性に対して心を開いている時だ」と話す。
もちろん、意識がさまようばかりで、肝心の課題がおざなりになってしまっては意味がない。スクーラー氏は「マインドワンダリングのせいで、優先すべき課題に著しく支障が出ることもある」と注意を促す。例えば、読書中につい気が散ってしまって、文章が頭に入ってこないような場合だ。
だが、気を散らして集中力をそぐ負の効果しかないのであれば、なぜこれほど頻繁にマインドワンダリング現象が生じるのか、理解しがたい。
米コロンビア大学教授で認知神経科学に詳しいマリア・メイソン氏によれば、マインドワンダリングの最中、さまよう意識は完全にランダムな動きを示すのではなく、実はある一定の目的地に向かう傾向がある。その場所は、やりかけの仕事、かけそびれている電話など、未解決の問題という心の「VIPルーム」だという。