緑茶成分、脳の機能向上に効果か ダウン症治療への道も
(CNN) スペインのゲノム制御センターの研究チームはこのほど、緑茶に含まれる成分にダウン症の症状を改善する効果があるとの論文を発表した。
ダウン症は21番染色体が1本多いことで発症する。染色体が多いために細胞内に発現する遺伝子も生成されるタンパク質も多くなり、それがさまざまな障害の原因となる。
「遺伝子の過剰発現を抑制する方法はない」と、同センターの研究者マラ・ディエルセン氏は言う。ディエルセン氏らは症状の大きな原因となっている遺伝子を突き止めるとともに、この遺伝子の活動を制御すればダウン症の認知症状を軽減できるのではと考えた。
そこで目をつけたのが緑茶に含まれるEGCGという物質だ。研究チームは87人のダウン症患者に1年間にわたって認知能力の訓練をする一方で、半数にはEGCGを、残る半数には偽薬を与えた。するとEGCGを投与された人々は視覚記憶や計算能力が改善し、脳の画像診断でも神経細胞間の連携や言語に関する脳の部位の機能に改善がみられたという。
ディエルセン氏は「ダウン症の薬物療法に道が開けた」と語る。
緑茶やその抽出物の健康効果に対しては世界各地の研究者が注目している。スイス・バーゼル大学のシュテファン・ボルクバト教授は2014年、健康な被験者12人に緑茶抽出物を投与する実験を行ったところ、脳内のワーキングメモリーに関係のある部位の連携がよくなったという。
もっとも、現時点で治療効果を期待するのは楽観的に過ぎるとボルクバト教授は言う。効果の範囲が不明であり、患者の症状も多岐にわたるため、「患者にとって完全に適切と言える薬」になるかどうかは分からないからだ。