フレンチの流行から健康志向、ファストフードまで――歴代大統領の食事から見る米国の変遷
シール氏によれば、1950年ごろ以前は、ほぼ全ての大統領が農場から届けられる自然食材を食べていた。フランクリン・ルーズベルトやハリー・トルーマンはカブやサヤインゲン、テンサイといった農作物をできるだけシンプルに調理した食事を好んだという。
各種レストランや専門のシェフが登場したことでこうした状況は変化し、創造的で異国情緒あふれる料理が人々の興味を引きつけるようになった。特にケネディ政権下では、フランス料理をはじめとする国際料理がホワイトハウスの調理場で主流になったという。
1800年代後半、米国の富裕層にとっては大がかりな食事が標準的となり、生活もデスクワークを中心とする傾向が強まっていった。この結果、19世紀半ばから20世紀初頭にかけての大統領の中には太めの体格の持ち主も登場した。
ニューヨーク大学教授のエイミー・ベントリー氏によれば、この時代は食料の供給が増大し、食の産業化が進んだ時期だった。特に男性にとっては、大きな体格を有していることが権力の象徴になった。太めで体格が大きいことは、「私は肉体労働をする必要がない」「十分な食事を取っている」と示すのに等しかったという。
第2次世界大戦後になると、米国民は心臓病や高血圧など食べ過ぎと関連する健康問題を抱え始めた。ドワイト・アイゼンハワーは1955年に心臓発作に見舞われ、以後は食生活を改め脂肪の摂取を避けた。以降の大統領の多くは、健康を意識した食事を取るようになった。