消えた氷河を悼む「葬儀」実施、数百人が参列 スイス
(CNN) 氷河の後退が進むスイスで22日、「ピツォル氷河」の消失を悼む「葬儀」が執り行われ、数百人が参加した。
スイス東部のピツォル氷河は2006年からこれまでに体積の80~90%を失った。
スイス連邦工科大学チューリヒ校の専門家、マティアス・フース博士によると、残っているのはフットボール場にして約4面足らず、2万6000平方メートルの氷原だけ。同国の観測システムから外れる初の氷河となる見通しだ。
気候変動問題に取り組むスイス気候保護協会(SACP)が主催した葬儀には、約250人が集まった。一行はピツォル氷河まで登り、地元の司祭が追悼の辞を述べた。
フース氏はCNNに「ピツォル氷河は消えた。多少の雪は残るが、氷河はもうない」「転がっている氷のかけらも次第に岩石の破片で覆われていく」と述べ、氷河の科学的な定義にもはや当てはまらないと説明した。
専門家のマティアス・フース博士はピツォル氷河が事実上消滅したと説明する/FABRICE COFFRINI/AFP/AFP/Getty Images
SACPのコーディネーター、アレッサンドラ・デジャコミ氏はCNNに、スイスの氷河の8割がピツォルと同じような大きさだと指摘。このままではほかの氷河でも同じことが起きると警告した。
同氏によれば、SACPはスイス政府に対し、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにするよう求める運動を展開してきた。署名人数はすでに国民投票の実施に必要とされる10万人を超え、12万人に達している。
アイスランドでは今年8月、気候変動で失われた同国初の氷河、オクヨクットルを記念するプレートが設置された。
今年6月に発表された研究結果によると、ヒマラヤ山脈の氷河も今世紀に入ってから、年間50センチ近いペースで解けている。