酸素がなくても生きられる生物発見、「動物」の定義が変わる?
(CNN) 米オレゴン州立大学の研究チームがこのほど学会誌に寄せた論文で、酸素がなくても生きられる特異な生物を発見したと発表した。
この生物はサケの細胞に寄生して、呼吸で酸素を取り込まなくてもエネルギーを生成できるよう進化した。「動物」とは何かの定義を変えさせる発見と研究チームは位置付けている。
米科学アカデミー紀要に論文を発表した研究者によると、「ヘネガヤ・サルミンコーラ」と呼ばれるこの寄生虫は、クラゲやサンゴの仲間の生物で、呼吸する代わりにサケの体内に寄生して栄養素を盗み取る。細胞の数は10に満たない。
ヘネガヤ・サルミンコーラはサケの筋肉の中に小さな白い嚢胞(のうほう)を形成する。恐らくサケが傷つくことはなく、人に感染することもできないと研究者は推定する。
サケの体内にはほとんど酸素がないことから、この寄生虫は、生物の体内で食べた物をエネルギーに変換するミトコンドリア・ゲノムを完全に抹消することによって、この環境に順応した。「ゲノムをなくすことで、必要としなくなったもののために遺伝子を複製する必要をなくして、エネルギーを節約している」(論文共同執筆者のスティーブン・アトキンソン氏)という。
酸素の代わりに何を使って「呼吸」しているのかは不明だが、エネルギーを生成済みの宿主から分子を吸収しているとアトキンソン氏は推定する。
研究チームでは、酸素がなくても生きられる動物は、ほかにももっとたくさん発見できると予想している。