新型コロナで脳損傷の可能性、合併症に警戒を 英研究
(CNN) 新型コロナウイルスに感染した患者は連鎖的に脳の損傷を引き起こす可能性があるという調査結果を、英ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームが8日の学会誌に発表した。
新型コロナウイルスについてはこれまでにも、たとえ患者に重い呼吸器系の症状がない場合でも、脳卒中や神経の損傷、脳の炎症といった神経系の合併症を引き起こす可能性が指摘されていた。
「新型コロナウイルス感染者については、そうした合併症を警戒する必要がある」「今回のパンデミックに関連して脳損傷の大規模な流行が起きるかどうかはまだ分からない」と研究チームは説明。新型コロナウイルスによって神経系に長期的な影響が出る可能性について、さらなる研究が必要だと指摘した。
今回の調査は新型コロナウイルス感染が確認された患者と感染が疑われる患者について、UCL病院で治療を受けた43人を対象に、4月から5月にかけて実施した。年齢は16~85歳で、症状は中程度から重度だった。
調査の結果、43人のうち10人に「一時的な脳機能不全」とせん妄の症状があり、12人は脳の炎症、8人は脳卒中、8人は神経の損傷が確認された。
脳の炎症が起きた患者のほとんどは、急性散在性脳脊髄(せきずい)炎(ADEM)と診断された。ADEMは死に至ることもあるまれな疾患で、新型コロナウイルス流行前は、同病院で確認された患者は月に1人程度だったが、今回の調査期間中は週に1人以上に増えていた。
ある女性患者は、自宅でライオンやサルの幻覚を見たと訴えた。手足や顔のしびれ、物が二重に見える、方向感覚を失うなどの症状を訴えた患者や、ほとんど意識がなく、痛みにのみ反応する重度の患者もいた。