空港ピアニストに660万円超のチップ、通りすがりの旅行者の動画に共鳴
(CNN) 「バレンタイン」ことトニー・カーターさん(66)がピアノの前に座ると、指がひとりでに鍵盤の上で踊り出す。カーターさんは笑顔を浮かべて目を閉じ、旋律に身を任せる。
カーターさんは米ジョージア州のハーツフィールドジャクソン・アトランタ国際空港でほぼ毎日演奏を披露し、幸運にもそれを耳にした旅行客を魅了している。
作家のカーロス・ウィテカーさん(46)もその1人だった。21日は予定していた講演が中止になったため、テネシー州の自宅に戻る途中だった。
「あの朝は超気が滅入っていた。ルート変更でアトランタへ行かなければならなかった。コンコースを歩いていると、誰かが弾くピアノの音が聞こえた」(ウィテカーさん)
ウィテカーさんは思わず足を止め、コンコースAのピアノバーに1時間半座ってカーターさんの音楽に耳を傾けた。ポッドキャストやインスタグラムのインフルエンサーでもあるウィテカーさんは、カーターさんの動画を撮影して、20万人以上のフォロワーがいるインスタグラムのチャンネルで共有した。
やがて2人は言葉を交わして互いの身の上について親しく語り合い、カーターさんがピアノに戻ったところで、ウィテカーさんにアイデアがひらめいた。
「インスタグラムのフォロワーに向け、私たちでカーターさんに人生最大のチップを贈れるだろうかと問いかけた」とウィテカーさん。「30分以内に1万ドル(約110万円)が集まった」
ウィテカーさんは、見知らぬ人たちから数千ドルが集まったとカーターさんに告げた時の様子も動画で撮影してインスタグラムで共有した。
カーターさんはCNNの取材に「冗談だと思った。信じられなかった」と振り返る。「私は寄付したり人を助けたりするのが大好きだけれど、自分のためにこんなことをしてもらえるなんて予想もしなかった」
ウィテカーさんは23日夜、「私がナッシュビルに着くまでには2万ドルになっていた。その夜、私のポッドキャストで彼にインタビューした時には4万4000ドルになった。今この時点ではほぼ6万1000ドルになっている」と報告した。
カーターさんは6歳の時、やはりピアニストだった父に連れて行ってもらったレイ・チャールズのコンサートでピアノに取りつかれたという。
「ピアノを弾いていると、自分が世界一幸せな男だと感じる。ピアノを弾き、その幸せに応えてくれる人たちを見るのが最高に幸せ」(カーターさん)