廃タイヤに入ったヤドカリ脱出できず、「幽霊漁業」の実態解明 弘前大研究
海洋科学に詳しいオーストラリア・タスマニア大学講師のジェニファー・ラバーズ氏によると、ヤドカリは海岸の土壌をかき回して循環させ、ヤシの木のような植物の繁殖や再生を手助けしている。海中では生物の死骸をあさって海底をきれいにする役割を果たす。
さらに、魚やウミドリの食物連鎖の最下層にあって、安定した食糧源を提供している。
米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)によれば、タイヤは約6~10年の寿命を終えると、一部はリサイクルされたり用途を変えたりして使われるものもあるが、多くは水中に投棄される。
オランダ公開大学の17年の報告によれば、海洋のマイクロプラスチックの最大で10%は廃タイヤが原因だった。
ヤドカリは海岸でも、ペットボトルなどの容器による汚染の犠牲になっている。ラバーズ氏が19年にオーストラリア領のココス(キーリング)諸島で行った調査では、ヤドカリがプラスチック容器を殻と勘違いしていることが判明。1平方メートルごとに1~2匹のヤドカリが、プラスチック容器に閉じ込められていた。
ラバーズ氏は弘前大学の研究について、この問題が当初考えていたよりも広範に及んでいることを物語ると指摘する。
ウミガメのような生物が、廃棄された漁網や釣り糸に絡まることもある。メキシコ沖では18年、300匹以上のウミガメが死んでいるのが見つかった。
「海岸の飲料ボトルだけでなく、車のタイヤを含むさまざまな種類のごみが、我々の予想していなかったさまざまな生息地で、もっと多くの種に影響を及ぼしているようだ」とラバーズ氏は警鐘を鳴らしている。