水中写真で見る、世界で最も危機的状況にある淡水生態系
危機に瀕する南アフリカの河川
シェルトン氏の母国、南アフリカでは、河川生態系の保護が急務となっている。18年の国家生物多様性評価によると、南アフリカで最も脅威にさらされている種群は淡水魚であり、湿地・河川生態系は、他のどの生態系よりも危機的な状況にあるという。南アフリカの淡水魚種の半分は同国にのみ生息しているため、個体数の減少を防ぎ、生息地の劣化や捕食性の外来種などの脅威を最小限に抑えるための保護戦略が大いに必要であると、報告書は指摘している。
「淡水生態系が広範囲にわたって悪化しているのを目の当たりにしている。こうした生態系の保全に携われる機会を得たことが、私を突き動かしている」とシェルトン氏は述べた。
西ケープ州を流れる川の空撮写真/Jeremy Shelton
同氏は、クランウィリアム・サンドフィッシュやバリーデール・レッドフィンといった絶滅危惧種の保護に取り組む「ケープ・クリティカル・リバーズ・プロジェクト」や、若者と河川生態系をつなぐことを目的とした野外学習プロジェクトなど、多くの淡水保護プロジェクトに携わっている。
だがシェルトン氏は、写真には国境を越えて、自然の美しさや生物多様性の危機を地球規模で伝える力があると信じている。
「写真とそれに伴う科学を通して、河川・湿地帯の水面下にある生命の美しさやはかなさを、人々に受け入れてもらいたい」「これまで見えなかった世界とつながることによって、人々がもっと思いやりを持ってこれらの生態系に接し、自分たちの生き方や自然生態系との関わり方について、もう少し思慮深くなることを願っている」(シェルトン氏)