絶滅したフクロオオカミ、遺伝子編集で復活目指す オーストラリア
復活プロジェクトでは遺伝子編集や人工子宮の形成といった最先端の科学や技術を活用する。
まず絶滅したフクロオオカミのゲノムを解析し、生きている中で最も近い種のネズミに似た肉食有袋類スミントプシスのゲノムと比較して、違いを見極める。
次にスミントプシスから生きた細胞を採取し、フクロオオカミと異なる部分のDNAを編集する。「実質的に、スミントプシスの細胞を加工してタスマニアンタイガーの細胞にする」(パスク教授)
細胞のプログラミングに成功すれば、幹細胞技術やスミントプシスを代理母とする生殖技術を使い、その細胞を生きた動物に戻す。
「究極の目標は、この技術を使ってこうした種を野生に復活させ、生態系における決定的に重要な役割を果たしてもらうことにある。いつかタスマニアの森林でその姿が見られることを願って」(パスク教授)
スミントプシスは成体のフクロオオカミよりずっと小さい。しかしパスク氏によると。有袋類の赤ちゃんは全て生まれた時は体が非常に小さく、米粒ほどしかないこともある。つまり、ネズミほどの大きさのスミントプシスでも、フクロオオカミのような動物の赤ちゃんの代理母になることが可能だという。
プロジェクトのスケジュールは未定だが、スミントプシスの方がゾウに比べて妊娠に時間がかからないことから、マンモス復活プロジェクトよりも進展は早いだろうと研究者は指摘する。
オーストラリアでは気候変動の影響で森林火災が増え、タスマニアンデビルのような有袋類が脅かされている。フクロオオカミ復活の研究は、そうした有袋類を救う役にも立つことが期待される。