新たな地質時代「人新世」の創設案を否決、時期尚早か 国際学会
(CNN) 人類の活動がいかに深く地球を変えたかを反映するため、「人新世」と呼ばれる新たな地質時代を設ける提案について、研究者でつくる組織が否決したことが分かった。
CNNが5日に投票権を持つ委員3人に接触したところによると、国際地質科学連合(IUGS)の下部組織「第四紀層序小委員会」が提案を否決した。
今回の投票は、人類の地球への影響を最も鮮明にとらえた地質学的な場所を選出する15年来のプロセスを踏まえて行われた。この取り組みを主導した「人新世作業部会」は2023年7月、カナダ東部オンタリオ州のクロフォード湖を対象地に選定したと発表。理由として、湖底のたい積物から1950年以降の原爆実験が残した地球化学的な痕跡、とくにプルトニウムの痕跡を見て取ることができる点を挙げた。
オランダ・ユトレヒト大学のキム・コーエン助教(地球科学)は、否決は全会一致の結果ではなかったと説明。「棄権者もいた。賛成票は半数に満たず、過半数が否決票だった」と明かした。コーエン氏自身は賛成票を投じた。
英ケンブリッジ大学スコット極地研究所の名誉教授で、小委員会の投票メンバーでもあるフィル・ギバード氏は「正式に人新世を設ける提案は66%の票で否決された」と説明する。
地質時代は45億年の地球史を理解するための公式の枠組み。地質学者は地球の歴史を「累代」「代」「紀」「世」「期」に区分しており、「累代」が最長、「期」が最短のまとまりとなる。
人類が地球に大きな影響を与えたことを疑う科学者はほとんどいないが、この変化が「世」のレベルに相当するかは見解が割れた。地質学的にみて宣言が時期尚早であることがうかがえる。
一部の専門家からは、「人新世」の開始時期は産業革命の幕開けなど、別の形で定義した方がいいとの見解が出ている。人類が地球へ与えた影響については、長い時間をかけて徐々に展開する地質学的事象として分類すべきだと提唱する専門家もいる。