インドの謎の鉄柱、1600年経った今もさびない理由とは?
(CNN) 鉄の構造物が、風雨にさらされながら1600年もの間さびることなくそびえ立つことは可能なのだろうか。建造当時の技術不足を考えると、あり得ないことのように思える。
だが、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産に登録されている「デリーのクトゥブ・ミナールとその建造物群」(インド・ニューデリー南郊のメヘラウリー地区に位置する13世紀初頭に建てられた歴史的記念碑と建造物の複合建築群)の敷地内には、まさにこの謎を証明するような不思議な建造物がある。
クッワト・アルイスラム・モスクの中庭に入るとすぐに、上部に装飾が施された高さ7.2メートル、重さ6トンの鉄柱が目に入る。
注目すべき点は、この鉄柱はニューデリーの猛暑や汚染などの環境的な逆境や経年劣化をものともせず、建造当時と同じように原形を保っていることだ。その起源は5世紀までさかのぼり、その驚くべき耐久力は今なお旅行者を魅了し続けている。
なぜこれほど長い間、腐食に耐えることができたのか?
「クトゥブ・ミナールとその建造物群」の一部をなすクッワト・アルイスラム・モスク/Anders Blomqvist/The Image Bank Unreleased/Getty Images
通常、空気や湿気にさらされた鉄や鉄合金の構造物は、時間の経過とともに酸化し、パリのエッフェル塔のように何層もの特殊塗料で保護されない限り、さびで覆われる。インド国内外の科学者たちは1912年、この鉄柱の研究を開始し、なぜ腐食しなかったのかを解明しようとした。
その謎が解明されたのは2003年のことで、インド工科大学(IIT)カンプール校の研究者らが、答えを学術誌「カレント・サイエンス」に発表した。
鉄柱は主に錬鉄でできており、現代の鉄とは異なり、リンの含有量が高く(約1%)、硫黄とマグネシウムが不足していた。さらに、古代の職人は「鍛接」と呼ばれる技法を使用していたことが判明した。
つまり鉄を加熱して叩(たた)くことで、高いリン含有量をそのまま維持できたのだが、現代では珍しい技法である。
この論文を執筆した考古冶金学者のR.バラスブラマニアム氏は、この型破りな方法によって柱の強度が維持できたと述べた。
同氏によると、鉄、酸素、水素で形成された化合物「ミサワイト」の薄い層も柱の表面から発見された。この層は、鉄に含まれるリンの含有量が高く、石灰が存在しないことで触媒的に形成され、柱の耐久性をさらに高めるという。
バラスブラマニアム氏は当時の冶金学者たちの創意工夫を称賛し、この柱を「古代インドの冶金技術の生きた証し」と表現した。