偶然割れた岩の中に黄緑色の結晶、火星で驚きの発見 米探査車
「奇妙な岩石」の平原
ゲディズ渓谷流路に接近したキュリオシティからは、異様な光景の写真が送られてきた。サッカー競技場の半分ほどの大きさの平原に、手のひらほどの大きさの真っ白な石が散乱している光景だった。
研究チームは当初、この「奇妙な石」は、恐らく山の高い所から水によって運ばれてきたがれきの一部だと考えた。しかし詳しく調べた結果、こうした岩石の平原は発見場所で形成されたものだと考えるようになった。
この石を採集して調査したいと考えたが、石が小さくもろすぎて、キュリオシティでは掘削できなかった。そこで硫黄岩が形成された過程を探るため、近くの岩盤に目を向けた。
地球上では純粋な硫黄は、火山活動や高温または低温の温泉など、特定の条件下のみで形成され、その過程で硫黄と同時にさまざまな鉱物が形成される。
6月18日、研究チームは「マンモス湖」と呼ばれる流路から、大きな岩石を採集した。探査機の計器でこの岩石の塵(ちり)を分析した結果、それまでの探査では見たことのないほど多様な鉱物が見つかった。
キュリオシティの旅は続く
硫黄がどのように形成されたのかを探る手がかりは見つかっていない。それでも研究チームはそれぞれの鉱物がいつ、どのように形成されたのかを突き止めるため、キュリオシティで収集したデータの解析を続けている。
「この岩板は幾つもの違う環境を経験してきたのかもしれない」とバサバダ氏は言う。「いわば互いの上にプリントし合っているような状態だ。我々はそれを解明しなければならない」
キュリオシティは引き続きこの流路の探査を続け、その後は山に沿って西へ向かい、さらに興味深い地形を探す。
12年にわたって探査を続け、車輪の問題や機械系の問題など「危機一髪」の事態を経験しながらも、キュリオシティの健康状態は依然として素晴らしいとバサバダ氏は語る。
「非常に幸運だったと思っているが、次は危機一髪では済まないかもしれないという危機感は全員が感じている。だから最大限に活用しようとして、この素晴らしい着陸地点を選んだ。12年分の科学に値する選択ができてよかった」(バサバダ氏)