偶然割れた岩の中に黄緑色の結晶、火星で驚きの発見 米探査車
(CNN) 米航空宇宙局(NASA)の探査車キュリオシティの発見は、それまでの火星探査の中でも際立っていた。純粋な硫黄でできた岩石は、重さ1トンのキュリオシティにたまたまひかれた岩が砕け、内部があらわになったことから見つかった。火星で初めて発見された黄緑色の結晶だった。
「最も不思議で最も予想外の発見だと思う」と語るのは、NASAジェット推進研究所でキュリオシティのプロジェクトを担当する研究員のアシュウィン・バサバダ氏。「ものすごく運が良かったとしか言いようがない。全ての岩の中に興味深いものがあるわけではない」
研究チームは火星のゲディズ渓谷流路を探査したい意向だった。ここでは30億年前に流水とがれきが混ざってできたと思われる曲がりくねった流路が、高さ約5キロのシャープ山に刻まれている。キュリオシティは2014年からこの山を探査していた。
遠くからは白い岩石が見えていたため、近寄って観察しようとジェット推進研究所からキュリオシティに指示を送り、90度方向転換させてカメラで周辺の地形を撮影した。
5月30日、バサバダ氏のチームは、キュリオシティの車輪が通過した跡に、砕けた岩が転がっているのを発見した。この岩に接近して撮影した写真には、思いがけないものが写っていた。
研究チームは今、火星に硫黄が存在することにどんな意味があるのか、火星の歴史について何を物語るのかを解明しようとしている。
火星ではこれまでに、硫酸塩(水が蒸発してできる硫黄を含有する塩)は発見されていた。地表の亀裂の中には真っ白な硫酸カルシウム(石膏<せっこう>)の痕跡もあった。これは古代の地下水の流れが残した硬水の堆積(たいせき)物だった。
硫黄岩は一般的に、「美しい半透明の結晶のような風合い」(バサバダ氏)をもつ。しかし岩の外側は火星の砂嵐にさらされて風化し、赤茶けた火星の大地に溶け込んでいた。
研究チームは2度驚いたとバサバダ氏は言う。最初は岩の中の「美しい構造と色彩」を目にしたとき。2度目はキュリオシティの計器を使ってこの岩を分析し、これが純粋な硫黄だったことを示すデータを受信したときだった。
火星探査の共同研究者で米パデュー大学教授のブライオニー・ホーガン教授は「硫黄の画像を見て愕然(がくぜん)とした」と言い、「純粋な硫黄の発見は非常に奇妙だ。地球上ではほとんどが、イエローストーンの熱水噴出孔のような場所で見つかっている。従って、シャープ山でこの岩がどう形成されたのかは大きな謎だ」と指摘する。