宇宙旅行者が直面する「病」とは、民間宇宙飛行士が解決できる可能性
(CNN) 米民間宇宙企業スペースXによるミッション「ポラリス・ドーン」に搭乗した4人のクルーは、飛行中に体験したさまざまな身体感覚を報告した。このミッションは人類がここ数十年で経験したことのない高度の軌道に民間の宇宙飛行士を送り込むことに成功した。
元米空軍パイロットのスコット・ポティート氏はCNNの番組で「最初の数日で視力が悪くなり始めた」と語った。
スペースXのエンジニアで、ポラリス・ドーンミッションの医務官を務めたアンナ・メノン氏は、「宇宙適応症候群」を発症したと語った。これは宇宙飛行をする人のおよそ60~80%に影響を及ぼす現象で、目まいや吐き気から嘔吐(おうと)に至るまでさまざまな症状が発生しうる。メノン氏はそれらすべてを経験したという。
不快な重力加速度や方向感覚を失わせるような無重力状態におかれる宇宙旅行は、人体にさまざまな影響を及ぼす可能性がある。
米航空宇宙航空局(NASA)は以前からこれらの症状について認識し、研究しているが、民間企業によって実施されたミッションでは、その研究をさらに推し進める取り組みが行われた。
ミッション中、クルーは眼圧を測定する特殊なコンタクトレンズを装着したり、脳の解剖学的構造の変化を追跡するためにMRI検査を受けたりするなど、健康に焦点を当てたさまざまな実験を行った。
金融テクノロジー企業の創設者ジャレッド・アイザックマン氏は、このミッションはより多くの人々が宇宙飛行をする道を開くことを目的としているため、人体への影響についての答えを追求したと述べた。同氏は資金を援助し、同ミッションを指揮した。
アイザックマン氏によると、過去60年間に約600人が軌道周回飛行に参加し、その半数以上が宇宙適応症候群にかかっている。同氏は、これらの人々は最も厳しい審査を通過した人々であり、いつか何百人、何千人もの人を宇宙に送り出すなら、この問題を解決する必要があると考えている。
スペースXの創業目的は、人類を初めて火星に飛行させ、最終的に定住することだ。
「サイボーグ実験」
9月のミッション中、クルーは初の商用船外活動を実施するとともに、地球のバンアレン帯も飛行した。
クルーからの最初の報告では、放射線被ばくによる具体的な健康への影響は必ずしも明らかにならなかったが、アイザックマン氏は目を閉じたときに「閃光(せんこう)や光」が見えたと述べた。この現象はまだ十分に理解されていない。